*

【音響の火花】・序・そもそも“音響”って?

公開日: : 最終更新日:2013/06/10 オーディオ・ビジュアル全般

 いわゆるオーディオの考え方を映像にも取り入れると、「オーディオビジュアル」という趣味の領域が出来上がる。
 そこで私が気付いたのが、「映像作品の面白さにとって、“音”が果たす役割はとてつもなく大きい」ということだ。言い換えれば、「“音”を意識することによって、映像の面白さは倍増する!」ということに他ならない。
 失うものは何もない。物語を楽しみ、目で見て楽しんできた今まで通りの映像鑑賞に、今度は“音を聴く”という意識が加わるだけだ。純然たる楽しみの上乗せである。私のような映像大好き人間にとって、これほどの福音はない。
 「ただでさえ愛してやまない作品が、音を意識することでもっと面白くなる」という福音だ。

 ここで重要になるのが、音響である。あくまで音響であって、音質ではない。
 音質と音響に関して、私は以下のように解釈している。ちなみに、ここでいう音響とは“映像内の音”のことを指す。また、音響学とかその辺のことはさっぱり知らないので、あくまで私自身の解釈だということに注意してほしい。
 音質とは、高音が伸びているとか、低音がよく出るとか、音に瞬発力があるとか、音がきちんとほぐれているとか、そういう“再生する時点”の問題だ。で、この音質というのは、再生機器の質を上げていけば元が悪くても意外となんとかなってしまう。BDのロスレス音声が登場する前、DVDのロッシー音声時代でもじゅうぶん楽しめたのだから。
 一方、音響とは、制作者が“その映像の音をどのように作ったのか”、すなわち“再生する以前”の問題である。例えば“一発の銃声”でも、ただバンと鳴らして終わるのか、それとも引き金を引く音・撃鉄の音・発射音・弾丸が空を切る音・着弾音・余韻・残響までマルチチャンネルを駆使して構築するのか、そういうことである。再生機器の質によって再生できるレベルに差はあるとはいえ、根本的に我々視聴者がいじることのできない部分である。DVDからBDに移行し、容量やスペックの関係から音質は上昇しても、音響そのものが善くなるなどということはない。ただし、音響を制作する時点できちんと伸びた高音・迫力のある低音・瞬発力etc…を“収録”する必要はあるので、音響と音質は決して分離するものではないということは注意しなければならない。そしてそのためにこそ、いわゆる音響スタジオは極めて優れた再生システムを構築している。
 音質と音響の線引きは非常に難しいし、私もきちんと説明できたのか自信はないが、なんとなく理解してもらえるだろうか。

 音響、音とは映像を嘘から真にする力を持っている。
 視覚的には天変地異が巻き起こっているような映像でも、音響がしょぼければ途端に現実感を失う。
 本当に善く出来た音響とは、もはや音だけで(目を瞑っても)作品中で何が起こっているのかを実感できるし、視覚情報と結びつき、互いに補完し合い高め合うことで、無尽蔵の感動を生み出すことができる。大げさなことを言うようだが、瞬きも、時には呼吸さえも忘れて映像に没入する瞬間というのは間違いなく存在する。そして、その至福の瞬間を味わうためには、作品それ自体が優れた音響を備え、さらにそれを十全に現出し得る再生システムが必要になるのである。
 これは「映画館で見る映画はなぜ楽しいのか?」という疑問に対する答えでもある。
 すべてはより深い感動のために。


 さて、前置きが長くなってしまったが、また新しくオーディオネタで何か書き始めようとするにあたり、以前と同じような視聴記を続けたのではちょっと面白くないな、との思いがあった。そして、いまさら画質音質を気にしなければならないようなシステムではないし、むしろ以前の音質の評価も七割くらい音響に軸足を置いた評価だったので、いっそ完全に音響にフォーカスした記事を書こう、と思ったわけだ。

 【音響の火花】では、映画・アニメ・ゲームといったあらゆる“映像作品”の「音響」に焦点を当てていく。
 これから、記事ひとつにつき、ひとつの作品のひとつのシーンを取り上げる。私が自信を持って、「このシーンは音響的にすげえぞ!」と太鼓判を押すシーンである。
 作品内容やら脚本やらテーマ性やら、その手の小難しい話題はとりあえず脇に置いて、とにかく「優れた音響によって映像の楽しみはどれだけ増えるのか」ということを感じられる記事にしていきたい。
 これからの記事を通じて、「音にこだわるのって楽しそうだな、ひょっとしたら自分の好きな作品ももっと楽しめるかな」と思ってもらえたのなら本望である。そしてそれこそが、私のオーディオ観の発露である。


 繰り返しになるが、すべてはより深い感動のために。


次回予告:『鴉-KARAS-』第一話・オープニング

スポンサーリンク


関連記事

【イベントレポート】ネットワークオーディオ実践セミナー・クリアーサウンドイマイ

【ネットワークオーディオで実現する快適な音楽鑑賞空間の構築】全国横断実践セミナー  8月30日

記事を読む

続・Nmode X-DP10

新製品発売のお知らせ - Nmodeの部屋 発売日は2017年4月10日(月)です。 当初は

記事を読む

【BDレビュー】第347回『夜明け告げるルーのうた』

画質:8 音質:12 (評価の詳細についてはこの記事を参照) 映像:AVC

記事を読む

Roon 設定・再生編

前記事 Roonは音楽鑑賞の未来たり得るか Roon 導入編 Roonの「魔法」の正体

記事を読む

【Munich HIGH END 2017】Ayre QX-8 / AX-8 【Roon Ready】

 Munich HIGH END 2017で気になった製品やら何やら。 <HIGH END

記事を読む

DELA N1Z 来たる

 色々と御縁があり試用する機会に恵まれた。  LUMIN L1同様、まずは開梱&外観&初回起動

記事を読む

no image

【BDレビュー】 第88回『ゴッドファーザー PART3』

赤い画。 画質:7 音質:9 映像はAVC、ビットレートは多少頭打ち感あり。

記事を読む

言の葉の穴 2014-2015

 あけましておめでとうございます。  昨年は当ブログにお越しいただきましてありがとうございました。

記事を読む

【ネットワークオーディオTips】コントロールアプリの検証 2014 『Kinsky』(iPhone版)

コントロールアプリの検証 2014 『Kinsky』(iPad版)  今度はiPhone版。

記事を読む

【CES2016】続・ネットワークオーディオ色々

 やっぱり終わってから色々と記事が上がってきた。 Cary Audio AiOS Netw

記事を読む

スポンサーリンク

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

スポンサーリンク

【レビュー】SOULNOTE A-2 続・音質編 ― 純正ボード「SSB-1」と純正ケーブル「SBC-1」

【レビュー】SOULNOTE A-2 導入・外観・運用編 【レビ

DELA N1ZSの後継モデル

DELA、ミュージックライブラリーの最上位「HA-N1ZS20/2A」

NetAudio vol.29で記事を執筆しました

 本日発売。  なんとも光栄なことに、2017年のネットオー

HiVi 2018年2月号で記事を執筆しました【おまけつき】

 昨日発売。 月刊HiVi 2月号 1/17発売「HiViグ

【レビュー】SOULNOTE A-2 音質編

【レビュー】SOULNOTE A-2 導入・外観・運用編 愛によ

【レビュー】SOULNOTE A-2 導入・外観・運用編

SOULNOTE A-2 ― Dynaudio Sapphireへの捧

【CES2018】RoonのMQA対応、そしてAudirvanaが……Windowsに……!?

MQA Expands its Reach - stereophile

SOULNOTE A-2 ― Dynaudio Sapphireへの捧げもの

【レビュー】Dynaudio Sapphire  Dynaudi

生涯最高のカレンダー

 最高すぎる。 2018 磯野宏夫カレンダー

言の葉の穴 2017-2018

 「言の葉の穴」読者の皆様、あけましておめでとうございます。  昨年

言の葉の穴・2017年のハイライト

 オーディオネタも地元ネタもごちゃまぜのセレクション。  年の初めか

【レビュー】SOtM tX-USBultra

 どれだけPCとのUSB接続にオーディオ的な問題があると言っても、現に

【ネットワークオーディオTips】fidata Music App

【2017/12/30 アプリの正式リリースに伴い記事を更新】

【ハイレゾ音源備忘録】大原ゆい子 / 煌めく浜辺(アニメ盤)

なぜハイレゾ音源を買うのか ・アーティスト /

【ハイレゾ音源備忘録】YURiKA / 鏡面の波(アニメ盤)

なぜハイレゾ音源を買うのか ・アーティスト /

【BDレビュー】第354回『宝石の国』

アニメ『宝石の国』が素晴らしい  付

Roon 1.4でiOS端末をOutputとして使用可能になった

Roon 1.4 Is Live! - Roon Labs Ne

『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』はUHD BDでリリースされるのだろうか

 最後のジェダイを先日見てきた。  あるシーンでは「最初からそれをや

【ハイレゾ音源備忘録】Bruce Springsteen / Born to Run – 30th Anniversary Edition

・アーティスト / アルバムタイトル Bruce Spr

【ハイレゾ音源備忘録】The Beatles / Sgt. Peppers Lonely Hearts Club Band (Deluxe Anniversary Edition)

 祝・ビートルズのハイレゾ音源初配信。 ・アーティス

→もっと見る

PAGE TOP ↑