*

「プラットフォーム」としてのJRiver Media Center

 そろそろバージョン22になる記念。


 まず、JRiver Media Center(以下JRiver)は音声・画像・映像すべてに対応するマルチメディアソフトである。が、基本的にオーディオの文脈で登場することが多いようだ。

 再生ソフトとしてのJRiverは「ライブラリ機能統合型」で、そのカテゴリの中で総合的に最も多機能なソフトと言って差し支えない。Roonが登場した今でさえ、基本的にその立ち位置は変わらない。
 タグを十全に活かしたライブラリ機能――『サーバー』、DSDを含むハイレゾに完全対応し音質評価もすこぶる高い再生機能――『プレーヤー』、極めて優れた完成度を持つJRemoteを擁する盤石の操作性――『コントロール』。
 このように、JRemoteの導入が前提になるとはいえ、JRiverはネットワークオーディオの全領域を網羅し、それ自体で非常にレベルの高いネットワークオーディオ環境を構築することが可能である。

 そんなJRiverの総合力は単なる再生ソフトとしての域を越えたところにあり、DigiBit ariaなど、JRiverを純然たるオーディオ機器――ミュージックサーバーの基幹ソフトとして採用する例もある。この点で、JRiverは「専用コントロールアプリを持ってネットワークオーディオの実践が可能な」他の再生ソフト(foobar2000とか)と一線を画する。


 「ネットワークオーディオのプラットフォーム」という概念を披瀝したところで、あらためてJRiver Media Centerの価値を再確認したい。
 DigiBit ariaやPlayback Designs Syrah Serverなど、JRiverをプラットフォームに採用した製品にどんなことができるのか、という点でも役に立つはずである。

JRiver Media Centerでネットワークオーディオする!(サーバーソフトとして)
JRiver Media Centerと『JRemote』

 上の二つの記事でサーバーソフトの側面とコントロールの側面については既に触れたが、ここではナビゲーションツリーのカスタマイズと、意外と知られていない「プッシュ再生」を取り上げる。上の記事と併せて読んでほしい。


 毎度おなじみJRiverのPC画面。
20160605JRiverPC16

 再生ソフトとして何の変哲もないデザインである。アルバムアートのタイル表示なんて今時できて当然であって、それ自体では強みにも何にもなりゃしない。というよりむしろ、PCの画面はRoonの登場以前からいささか古臭く、再生操作もイマイチやり辛い。

 しかし、そんな操作性の不満はJRemoteのおかげで100%解決する。
JRemote(iPad)07


 というわけで、まずはナビゲーションツリーのカスタマイズから。
 このナビゲーションツリー、JRiverにおいては「ライブラリビュー」と呼ばれる。
 もちろんJRiverにもデフォルトでナビゲーションツリーが用意されているが、これを自由自在に追加・編集が可能。その柔軟性はそれこそAsset UPnPにも匹敵する。

 画面左上メニューの「表示」、もしくは左メニューの「オーディオ」の右クリックから、「ライブラリビューを追加」を選択する。
20160605JRiverPC01-2

 次のメニューでは「空白のビュー」を選択する。
20160605JRiverPC01

 次の出てくるメニューがコレ。
 まずは表示法を「カテゴリー」に変える。
20160605JRiverPC02
20160605JRiverPC03

 続いて、カテゴライズに使用するタグを選んでいく。
 ここで選択できるタグの種類はとんでもなく膨大であり、dBpoweramp CD Ripperかなんかで付加された普通は埋もれて見えない情報まで洗いざらい活用することもできる。
20160605JRiverPC04
20160605JRiverPC05

 例えば、Twonky Serverでおなじみ「ジャンル/アルバム」を作る場合はこうなる。
(JRiverに標準で用意されているジャンルという項目は「ジャンル/アーティスト/アルバム」に相当する)
20160605JRiverPC06

 いかにもオーディオマニアが喜びそうなツリーだって作れる。
20160605JRiverPC11

 あとは「新しいライブラリビュー」となっている名前を変えて完了。
20160605JRiverPC07
20160605JRiverPC08

 なお、ここで追加するライブラリビューはあくまで「PC画面用」であって、JRemote用とDLNAサーバー用は別々に設定する必要がある。DLNAサーバー用はともかく、JRemoteと分ける必要性は謎。
 どのみちやることは同じ。
20160605JRiverPC09
20160605JRiverPC10
20160605JRiveripad06

20160605JRiverPC13
20160605JRiverPC14
20160605JRiveripad05


 と、こんな具合で、Twonky Serverのように「あらかじめ用意されているナビゲーションツリーを選ぶ」のではなく、Asset UPnPのように「自分の好きなようにナビゲーションツリーを作る」ことが可能。しかもそれなりにわかりやすい。


 ついでにJRiverの再生機能の設定画面も載せておく。
 バージョン21ではDSD512への出力エンコーディングすら可能になっている。
20160605JRiverPC18
20160605JRiverPC17
20160605JRiverPC15


 「サーバー」と「プレーヤー」はこの辺にしてちゃっちゃと「コントロール」へ。必要な設定さえ済ませてしまえば、PC画面なんかに用はない。
 音楽再生の操作はは既出の記事を見てもらうとして、ここで注目するのは左下の「プレイヤー」という部分。

 タップするとこんな画面が出てくる。
20160605JRiveripad07

 Current zone:プレイヤーとなっているが、この「プレイヤー」とはPCを指す。スピーカーのアイコンをタップすれば、接続したUSB DACやら何やらを選択・切り替え可能。
20160605JRiveripad09

 ここでの「Zones」は音声出力先のこと。
 見ての通り、JRemoteを動かしているiPadで鳴らすことも、ネットワークに繋がったLUMIN A1やBubbleUPnPが動いているNexus 9で鳴らすこともできる。

 さらに「Link」で同期再生だって可能。
20160605JRiveripad08

 つまるところ、見た目はRoonほど垢抜けているわけではないが、JRiverはDLNAを使ってRoonのZonesと同じことができるのである。本来はRoonに先立つJRiverの機能を先に紹介すべきだったと少々反省している。


 さて、ここで重要……というより貴重なのは、ZonesにDLNA対応のプレーヤーを選んだ場合。
 何が貴重かって、DLNAの「2 Box Push System」という激レアなシステム構成になるところである。

 ネットワークオーディオの文脈でDLNAが使われる時、DMSとDMRとDMC、すなわちサーバーとプレーヤーとコントロールが分離独立する「3 Box System」が基本となる。DELAやfidataの場合はDMSとDMRが同一機器の中に同居していたりするが。

 JRemoteの「Zones」で表示されている「プレイヤー」とiPad以外の機器はあくまでDMRである。でもってこの時、DMSであるJRiverが自らDMRにデータを配信している。つまりJRiverはコントロールも受け持っているのであり、「DMS+DMC」という状態になっている。この「コントロール機能(DMC)を備えるサーバー(DMS)から直接プレーヤー(DMR)にデータを配信する」ことをDLNAの「プッシュ再生」と呼ぶ。「DMS+DMC」&「DMR」で箱二つの2 Box System。
 実はTwonky Serverのブラウザ画面からもプッシュ再生ができるのだが、あくまでオマケ的な機能に過ぎない。操作性的に実用レベルでのプッシュ再生が可能なのはホントJRiverくらいしか思い付かない。もちろんプッシュ再生はJRiver本体から可能だが、他の再生操作もそうであるように、やっぱりJRemoteから行ったほうが遥かに快適である。
 ちなみにJRemoteは「DMSとDMCを兼ねるJRiverを外からコントロールしている」だけで、DLNAの範疇外にある。ややこしいが、この場合でもJRemoteはDMCではない。

 で、このプッシュ再生ができて何の意味があるんだ、ということだが……
 On-Device Playlistに対応しないプレーヤーであっても、JRemoteはDMCではない(プレイリストはJRiver本体が持っている)ので、JRemoteを終了させてもプレイリスト通り再生が続く、とかそういうアレ。

 試しにOPPO BDP-103でプッシュ再生を試したところ、問題なく再生できた。
20160605JRiveripad11

 アプリを終了させても、
20160605JRiveripad02

 再生は続く。
20160605JRiveripad01

 もっとも、JRiverはRoonのRoonReady/RAATのような独自プロトコルを使っておらず、ユーザビリティはあくまでDLNAの限界に支配されてしまう。ギャップレス再生が急にできるようになるなんて奇跡は起こらない。

 あとは、他のコントロールアプリからアクセスするとJRiver(サーバー)はアルバムアートの解像度を下げるという意味不明かついやらしい挙動をするが、JRemoteを使ってプッシュ再生すればそれを回避できることくらいか。
 JRemoteは実際素晴らしい完成度のコントロールアプリなので、BubbleUPnP Serverとの併用も考えて上手に使おう。


 ちなみに、JRemoteは音源の情報をタグを含めて徹底的に表示するだけでなく、そこから直接タグの編集も可能。JRiver本体に直結しているからこそできる芸当である。
 JRiverの音源管理&ライブラリ構築ソフトとしての性能と使い勝手はMediaMonkeyに劣るが、JRiver & JRemoteで再生している最中にちょっと気になった部分を修正する程度ならば有用と言える。音源管理&ライブラリ構築は本来別枠でやるものだ。
20160605JRiveripad04
20160605JRiveripad03



 Asset UPnPに匹敵する強力なナビゲーションツリー/サーバー機能と、トップクラスの音源再生機能と、JRemoteによる優秀な操作性。
 JRiverをプラットフォームとして考えた時、トータルで実現する機能と性能のレベルは非常に高く、匹敵しようとするだけでも相当ハードルが高い。
 正直な話、JRiverを採用したDigiBitやPlayback Designsは限りなく正しい選択をしたと言える。ここまで紹介してきたJRiverの全機能が純然たるオーディオ機器としてパッケージングされているのである。そりゃもう強い。(その手の機器で、JRiver本体の各種設定がどれだけ解放されるのかという疑問もあるにはある)

 もっとずっと前に紹介すべきだった内容に終始した感はあるが、Roonをはじめとする様々なソフトが割拠する今でも、JRiver Media Centerのソフトとしての総合力はまったく陳腐化していないことが伝われば幸いである。
 その時々の流行とは無関係に、良いものは良い。

 バージョン22ではどんな進化を遂げるのだろう。
 個人的にはさっさとTIDALをビルトインしてもらいたいものだが……



Roon関連記事まとめ

【音源管理の精髄】 目次 【ネットワークオーディオTips】

よくある質問と検索ワードへの回答

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