【ファイル再生の基礎知識】「タグ」に関するありがちな誤解

 前回前々回の記事によって、タグの何たるかはだいぶわかってもらえたと思う。

 それを踏まえて、以下の文章を見ていってほしい。

・ちゃんと曲名を入れてるのに、再生ソフト/アプリの表示がおかしい/表示されない

・ちゃんとフォルダにアルバムが入っているのに、再生ソフト/アプリで見つからない

「ファイル名」と「タグ」は基本的に別物である、ということは何度も述べてきた。
 すなわち、上記のふたつの現象は、多くの場合タグの不備に起因する。
 どれだけファイル名の編集に気を使い、フォルダベースでの管理に精を出したところで、タグベースで音源を扱うソフトにおいては意味を成さないのである。

 そもそもリッピングの際、リッピングソフトに表示される諸々の情報は「タグとして付加される」と同時に、「フォルダ名や階層構造、ファイル名としても使われる」。それらの情報をタグとして付加せず、フォルダ名やファイル名としてのみ使うことに意味はない。
 音源に自分の意思を反映させ、きちんとタグを管理できるということは、同時にフォルダ管理もきちんとできているということである。それに、タグを管理しているからといって、フォルダベースのブラウズをするなと言っているわけではない
 タグ管理とフォルダ管理は両立する。決して喧嘩しない。ダウンロードした音源となれば確かに手間だが、CDについてはリッピングの時点でタグ管理とフォルダ管理が同時に完成する。両者を切り分けて考えること、それ自体がおかしいのである。
 「タグ管理がめんどくさいからフォルダ管理をしている」という人の中には、「一切自分の意思を反映させずに機械任せでリッピングし、その結果生まれた要領を得ないフォルダとファイルをまた一から編集する羽目になっている」という場合もあると思われる。とすれば、「タグ管理とフォルダ管理は別々にやらなくてはいけない。タグ管理はめんどくさい。一方でフォルダでブラウズすれば音源には辿り着けるから、フォルダ管理さえしていればいい」という発想になってもおかしくはない。結局のところ、最初の躓きが後々まで尾を引いているのである。

 とにかく最初が肝心である。

 では次。

・LINNのDSでは便利に再生操作できるのに、他のプレーヤーではそれができない

 これも誤解である。
 LINNのDSを使えば謎のパワーが働いてひとりでにライブラリが整理整頓され、快適な再生操作が全自動で実現される……そんな魔法はあり得ない。
 散々述べてきたとおり、快適な再生操作を実現するためには地道かつ徹底した音源管理が必要である。そこに近道はない。
 また、実際に「コントロール」を担うのはDSそのものではなく、あくまでコントロールアプリだということに注意してほしい。確かに、正直なところDS以外のネットワークオーディオプレーヤーの純正コントロールアプリはパッとしないものが多い(特に国産)が、別に純正を使わなければいけない理由はない。SongBook Liteしかり、Kinskyしかり、汎用的に使え、かつ使い勝手のいいアプリは間違いなく存在する。(もっとも、ハードウェアの時点でDSは快適さを実現するための機能を色々と備えているのだが、それはまた別の話)
 よって、別にDSでなくても、「愉快爽快快適至極ネットワークオーディオ」を実現することはじゅうぶん可能である。
 そしてその肝は、何度も何度も述べているとおり、「音源管理」、これに尽きる。タグは制するためにある。

 では次。

・PCオーディオとかネットワークオーディオが便利とは言うけど、例えばクラシックを作曲者や指揮者やオーケストラで分類・検索・選曲なんてできないでしょ?

 可能である。
 ただし、ハードルは高い。タグを編集するためにどんなソフトを使うかということまで問題になってくる。
 むしろ、タグを駆使してクラシックの音源を縦横無尽に扱えるようになれば、それはもうタグベースの音源管理を極めたと言っていいレベルだろう。
 さらに、音源管理を完璧にしたとしても、今度は再生ソフトやサーバーソフトに何を使うか、という問題もある。なぜなら、ナビゲーションツリーにそもそも指揮者や作曲者の項目がなければどうしようもないからだ。
 もう一度言うが、ハードルは高い。
 しかし、可能である。間違いなく可能である。
 第4章でサーバーについて書いたあたりで、あらためてクラシック音源をどう管理運用するかについて書こうと思う。
 →第9章で書く予定。

 PCオーディオやネットワークオーディオをやっていて、とりあえず音質がどうこうという問題はさておき、「音源」について「何か変だぞ?」ということがあれば、殆どの場合それはタグに起因すると思っていい。
 使うソフトやアプリによってインターフェースや使用感は色々と変わってくるが、とにかく音源に内的に付加されたタグこそが最重要であることに変わりはない。
 タグが狂えばすべてが狂う。

 タグを制する者は音源の管理運用を制する。

 では次回の記事で、実際にタグを編集してみようと思う。

【音源管理の精髄】 目次 【ネットワークオーディオTips】

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