【ファイル再生の基礎知識】音源管理における「自分ルール」の重要性 ジャンル/アーティスト/アルバム

『タグ』はなぜ重要か
最初にするべきこと

 「自分にとって良いライブラリとはどのようなものか」
 「どのようなライブラリを作りたいのか」

 ライブラリの構築においてこの2点を考え、『自分ルール』を作ることは非常に大切である。
 というのも、『自分ルール』に基づく音源管理こそ、「自分にとって理想的かつ普遍的なライブラリ」を構築するために不可欠であり、同時に「ライブラリの破綻」を克服する方法でもあるからだ。

 この記事では「ジャンル」「アーティスト」「アルバム」という、ライブラリを構築するうえで最も基本となる情報について、どのようなルールに基づいてタグを管理編集していけばよいのか、考えていきたい。

○ジャンル

 まず「ジャンル」でソートし、そこから目当てのアルバムを見つけていく方法を選択する人にとって、重要なタグはもちろん「ジャンル」である。
 この方法では、「ジャンル」が選曲の入り口となる。
 ゆえに、「ジャンル」をどのように管理編集するかが肝。
 以下、注意すべき点を示し、あくまで一例として私自身のルールについても紹介する。

・表記ゆれをなくす

 「Pop」「Pops」「pop」「ポップ」「ポップス」「POP」……
 「Progressive Rock」「Prog Rock」「プログレッシブロック」「プログレ」……
 「Jazz」「jazz」「JAZZ」「ジャズ」……
 ソフトによる自動タグ付けを使っている限り、表記ゆれは確実に発生してしまう。

 このような表記ゆれは百害あって一利なし。同じ意味であれば、たったひとつの表記に統一すべきである。
 そしてこの時、例えば「Pop」と「POP」のどちらがふさわしいかは、ライブラリを構築する人間の選択に委ねられている。もちろん、カタカナで「ポップ」だって一向に構わない。もっとも、その場合は他のジャンル名も全部カタカナで統一しないとみっともないことになるが。
 なお、ここでは「Progressive Rock」と「Prog Rock」は統一すべきと言っているのであって、「Rock」と「Progressive Rock」まで統一すべきと言っているのではないことに注意。もちろん「Rock」と「ROCK」は統一すべき。ここで言っているのはそういうことである。

・ジャンルの分類は自分の把握できる範囲で

 これは私なりのルールである。
 たとえば「ジャズ」というジャンル。
 wikiによれば、「○○ジャズ」というだけで10種類以上のジャンルが存在するらしい。クールジャズとかアシッドジャズとか。ただ、複数存在するからといって、実際にタグの時点でそこまで細分化する必要があるかどうかは別問題だ。
 私はモダンジャズとスムースジャズの違いはさっぱり分からない。メタルとヘビーメタルでは何が違うのかもさっぱり分からない。
 ただし、「Rock」と「Progressive Rock」の違いはなんとなく分かるし意識もしている。邦楽と洋楽は分けたほうがいいと思うから、「Pop」と「J-Pop」は分けている。「Rock」と「J-Rock」も分けている。まぁ「J-Rock」にはピロウズくらいしか入っていないが。

 というわけで、ジャンルの分類はあくまで自分の把握できる範囲にすべき。わかりやすさが最優先。それが選曲のしやすさに繋がる。

・基本的に「1アーティストにつきジャンルは1つ」

 これも私なりのルールである。
 上のふたつに比べれば縛りはだいぶ緩いが、このルールを課すことで選曲効率は著しく向上する。
 そもそも、ジャンル名と一言で言っても、誰が分けるのか、どのように分けるのか、そもそもその分類は正しいのかどうかという非常に難しい問題がある。
 たとえばマイケル・ジャクソン。彼のアルバムのジャンルははたして「Pop」なのか、それとも「Rock」なのか、はたまた「Soul」なのか、悩ましい。ならばいっそ、マイケル・ジャクソンのアルバムは全部「Pop」にしてしまえ! ……と決めてしまうのである。厳密かつ音楽史的な分類論は別の機会にするとして、あくまで選曲効率を考えてのルールである。
 また応用として、ゲームのサントラは全部「Game」に統一! 映画のサントラは全部「Movie」に統一! というようなルールも作れる。
 こうすることで、特定のアーティストが無闇やたらに複数のジャンルに散らばらないということはもちろん、自分で決めたことだからこそ、強烈に記憶に残る。この場合だと、「マイケル・ジャクソンの曲が聴きたければPopの門をくぐればいい」という理解が出来上がることで、選曲効率は著しく向上する。

○アーティスト

 まず「アーティスト」でソートし、そこから目当てのアルバムを見つけていく方法を選ぶ人にとって、重要なタグはもちろん「アーティスト」である。
 この方法では、「アーティスト」が選曲の入り口となる。
 ゆえに、「アーティスト」をどのように管理編集するかが肝。
 以下、注意すべき点を示し、あくまで一例として私自身のルールについても紹介する。

・表記ゆれをなくす

 ジャンル同様。しかし、ジャンル以上に難しい。「英語か、日本語か」という問題があるからだ。私はまだ遭遇したことはないが、「同姓同名のアーティストがいたら?」という問題もあるかもしれない。
 とりあえずできることからやっていくとすれば、「Michael Jackson」と「michael jackson」といったものは統一する。「Yes」か「yes」か「YES」か、微妙なところだがとにかく統一する。「The ○○」の頭のTheを付けるかどうかという問題もある。もし迷ったら、公式HPでどのように記述されているか確認してみるのもいい。繰り返しになるが、どのような表記で統一するかはあくまで自分に委ねられている。それが自分と音源との繋がりを生む。

 次に英語と日本語の問題。
 たとえば(たびたび登場している)「Corrinne May」か「コリン・メイ」かという問題。あるいは「the pillows」か「ピロウズ」かという問題。決定権はあくまで自分にある。表記がぶれていることに比べれば、英語と日本語のどちらを選ぶかはたいした問題ではない。好きなほうを選べばいい。単純な話である。
 あと日本語の場合、苗字と名前にも注意。「苗字 名前」にするか「苗字名前」にするかは統一しなければならない。スペースがあるだけで別のアーティストと認識されてしまう。

・オムニバス/コンピレーションアルバム

 これまた難しい。
 私の場合、アーティストを「Various Artists」で統一して曲名(「タイトル」のタグ)に実際のアーティストの情報を何らかの形で入れ込むか、あるいは“アルバムアーティスト”を「Various Artists」で統一して、実際のアーティストの情報を個々の曲の「アーティスト」のタグに入れていく、という方法を取っている。基本的には後者、そんなに思い入れがなければ(失敬、)前者といった具合に。

 さて、“アルバムアーティスト”という新たなタグが登場してしまったが、詳しい説明はリッピングの記事でまた述べようと思う。
 とりあえず、ひと手間必要である。

・アニメ/ゲーム/映画等のサウンドトラック

 またまた難しい。
 たとえばエヴァのサントラ。エヴァといえば鷺巣詩郎。しかし、残酷な天使のテーゼを歌っているのは高橋洋子。
 たとえばクロノクロスのサントラ。クロノクロスといえば光田康典。しかし、エンディングテーマを謳っているのはみとせのりこ。
 こういうことはざらにあり、結局これもオムニバス/コンピレーションアルバムと同様、どこまでこだわるかによる。

 ひとつ注意してほしいのは、ひとつのアルバムの中に複数のアーティスト情報を入れ込んだ場合、サーバーソフトによってはアーティストからアルバムにたどりついた時、アルバム内の全曲が表示されない=そのアーティストの曲しか表示されないということ。これを便利と捉えるか不便と捉えるかは人それぞれだが、一応覚えておいてほしい。

○アルバム

 ジャンルもアーティストも関係なく、とにかく全アルバムから目当てのアルバムを見つけていく方法を選ぶ人にとって、重要なタグはもちろん「アルバム」である。
 また、ジャンルから選んでもアーティストから選んでも結局最後にはアルバムにたどり着くわけで、アルバム名をどうするかは非常に重要である。
 以下、注意すべき点を示し、あくまで一例として私自身のルールについても紹介する。

・英語か、日本語か

 たとえば洋楽。たとえばYes。あくまで個人的な意見だが、「こわれもの」と「Close to the Edge」というアルバム名が同じライブラリ内にあるのはおかしい。「こわれもの」&「危機」、あるいは「Fragile」&「Close to the Edge」にすべきだ。さらに言えば、アーティストが「Yes」なら当然アルバム名も英語表記にすべきだし、「イエス」ならアルバム名も日本語表記にすべきだろう。
 たとえばゲームのサントラ。「クロノトリガー」なのか「Chrono Trigger」なのか。「エースコンバット」なのか「Ace Combat」なのか。
 何度も繰り返すようだが、どちらを選ぶかは個人の自由。ただアルバムに限って言えば、別に英語と日本語が混在していても構わない。ジャンルやアーティストとは違い、これ以上細分化できないからだ。
 選曲するうえでわかりやすく、かつ見た目にも美しいライブラリとなるように、個人個人で工夫すればいい。
 ちなみにこれはアルバム名だけでなく、「タイトル(曲名)」についても同じ。

・バージョン違い

 御存知のように、CDはよくリマスター盤が発売される。オーディオファンほど思い入れのあるアルバムについては何度もリマスター盤を買って、音の変化を楽しむことがあると思う。さらに最近ではハイレゾなんてものも登場し、ますます「アルバムは同じでも音源としては別物」という状況が生じている。
 それらをどのように管理すべきか。簡単な話である。タグをいじればいい。

 たとえばYesの「Fragile」。
 私はハイレゾ含めて3種類の音源を持っているが、それぞれ

・Fragile
・Fragile [Remaster 2009]
Fragile [Hi-Res]
Fragile [Steven Wilson Remix]

 というように、アルバム名を変えて、別の音源として管理している。
 どのような名前を付けるかはさておき、仮にアルバム名を同じにしてしまうと、タグベースのブラウズではひとつのアルバム内に同じ音源が複数入ってきてしまう。イメージとしては以下のように。

Fragile
-1 Roundabout
-1 Roundabout
-1 Roundabout
-1 Roundabout
-2 Cans And Brahms
-2 Cans And Brahms
-2 Cans And Brahms
-2 Cans And Brahms

 ……これではどれがどれだか分からない。

 というわけで、バージョンごとにアルバム名を変えるのは必須である。
 そうするからこそ、ファイル再生の特権ともいえる、「音源をバージョンごとに即座に比較」が可能になる。

 この記事で取り上げた「ジャンル」「アーティスト」「アルバム」は音源を管理するうえでのごくごく基本的な要素であり、他にも「作曲者」やら「年月日」やら「ディスクナンバー」やら「アルバムアート」やら、『自分ルール』で扱う項目は多岐に渡る。

 とはいえ、考え得るあらゆるタグを完璧に整備する必要はなく、要は「自分にとって必要な情報をしっかり付加する」ことが重要なので、こだわるところにはこだわり、そうでないところはスルーするくらいの心構えでちょうどいい。
 クラシックの音源管理となると確かに大変だが、それだけに得られるものも大きい

 ファイル再生に取り組むユーザーひとりひとりが自分なりのルールを考え、素晴らしいライブラリを作り上げていくことを願っている。

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