【2020/02/29更新・追記】


 レビューを動画にしてみました。




 「オーディオ機材のレビュー動画」はこれが一本目ですが、いやはや文章や講演とはまた違った方法論が要りますね……

 というわけで今後の洗練にもご期待ください。


空気録音で聴くParadigm Persona B


【追記おわり】



 Dynaudioのスピーカーに雪を感じ、Sapphireに惚れ、学生時代のオーディオの決算としてAudience 122を買ってまだ間もない頃、Zingaliのスピーカーを聴いたことがある。


Zingali Acoustics


 既に10年以上前のことなのでちょっとアレだが、たぶん、TWENTY 2.08というモデルだったように記憶している。


 一聴して、自分とは正反対のスピーカーだな、と思った。


 Dynaudioに同じ雪国の血(といいつつデンマークはそんなに雪は降らないらしいが)を感じ、他に代え難い魅力を感じた私は、スピーカーに関して、

 明より暗、
 光より闇、
 昼より夜、
 陽より陰、
 熱より冷、
 動より静、

 以上のような志向を持っていることは当時から自覚していた。
 だからこそ、静寂の中に澄んだ輝きを見出したDynaudioを選んだのだ。

 一方でZingaliのスピーカーは、

 暗より明、
 闇より光、
 夜より昼、
 陰より陽、
 冷より熱、
 静より動、

 見事なまでに私の志向とは正反対のスピーカーだった。
 Dynaudioが北欧の夜を冴え冴えと染める月光なら、Zingaliは地中海に燦々と降り注ぐ陽光だったのだ。しかも決して下品ではない。確かな知性も感じられた。ここ重要。


 というわけで、私の志向やDynaudioと対極にあるZingaliの音を聴いて、当時の私は「無限の資金力があればZingaliでもうひとつシステムを組みたい」と思った。今でも思ってるけど。特に全チャンネルZingaliでサラウンドなんて組んだらもう最高だろう。

 しかしZingaliはおいそれと手を出せる価格ではなく、いつしか日本での扱いもなくなっていた。
 それでも、「無限の資金力があればZingaliでもうひとつシステムを組みたい」との思いは残った。例えばECLIPSE TD307MK2AMonitor Audio MASSのように、一定の目的意識と要求に沿ってスピーカーを導入するのとは別の次元で、「自分にはないものを持っている」Zingaliに対する憧憬は残り続けた。

 私がオーディオ趣味を続けるなかで、存在に触れて純粋に心を奪われ、いつか手に入れたいとまで願ったスピーカー/ブランドはそう多くはない。その意味でDynaudio、特にSapphireはまさに筆頭であり、Zingaliは次点だったといえる。まぁ、この辺はオーディオ経験がそれほどない時期に聴いたからこそより強い印象が残った、ということもあるのだろう。

 Sapphireを手に入れるという夢が叶って以降はますますDynaudio愛が深まって、ますます入手が困難になったZingaliが次なる憧れの地位であり続けたのだが……


 半年ほど前、流れが変わった。


Paradigm(パラダイム)のスピーカー、「Persona」シリーズ
Paradigm Persona B / 7Fを聴いてきた話


 日本に導入されたParadigmの「Persona」シリーズを輸入元のPDNで聴いて、特にブックシェルフスピーカー「Persona B」について、久しくなかった衝撃を受けた。

 その後、クリアーサウンドイマイで行われたPersonaシリーズの試聴会で再びおおいに感心し、今度はPerosona Bを自宅に借りた


 ちなみに借りた際は当初Sapphireの内側にポン置きしただけだったのだが、

 さすがにあんまりだろうということで、手持ちのあれこれを使って、椅子の位置も動かして、こういうセッティングになった。

 スピーカースタンドをカバボードにベタ置きすると、中低域の充実と引き換えに音に鈍さを感じるようになってしまったが、あいにくこのスタンドはスパイクが使えない。

 そこで、スタンド底面にはD-REN Proを使った。目論見通りかなり効いた。


 このレベルのブックシェルフスピーカーを想定したスタンドの用意がなく、決して最善とは言えないセッティングでありながら、夢が叶ってメインスピーカーとして迎え入れたSapphireと比べてもなお、Persona Bの音にはぎょっとするものがあった。

 あの感情を抱かせるほどに。



 手に入れたい



 そして、先月ダイナミックオーディオで行われた試聴会を経て、決心がついた。



 憧憬の記憶の中にのみ住まうZingaliとは異なり、出会ったタイミングの関係で導入まで約四年半を要したSapphireとは異なり、Persona Bは今そこに在る。



 手を伸ばせば届く。



 私のスピーカー遍歴に現れた第三の煌めき。





 かくして、我が家にPersona Bがやってきた。






 色は初見時の印象が良すぎたので、そのままアリアブルー×シルバーパネルにした。

 ほんといつ見ても何度見てもこの仕上げには惚れ惚れする。

 SapphireのBordeaux仕上げと並び立つに一切の不足なし。



 価格的に近いトールボーイのPersona 3FではなくブックシェルフのPersona Bを選んだ理由は、まず事実上のフラグシップである「7F」と聴き比べてもなお「B」の音に感銘を受けた、というのがひとつ。
 そしてもうひとつは、「Sapphireを現在の位置/地位から動かすつもりがまったくなかった」から。愛ゆえに。そのうえで、様々な形でDynaudioやSapphireにはないものを私のオーディオ趣味にもたらすとすれば、ブックシェルフ以外だと逆に難しい。

 ひたすらひとつのスピーカーとひとつのシステムを磨き上げていくという方向からずれてしまう、ということについては、私自身思うところがないでもない。
 ただ、ちょうどデスクトップ環境/ゲームシアターを用意したところでもあるので、様々な環境と機材でオーディオの楽しみを追求するという意識とは乖離しない。

 つまるところ、私が導入にあたってPersona Bに求めたのは、DynaudioやSapphireにはないものを持っている「もうひとつのリファレンス」としての立ち位置である。



 それでは、肝心の音について。

 基本的な印象は以前PDNで聴いた時と変わっていないので、そちらとあわせて読んでもらいたい。



・再生環境詳細

fidata HFAS1-XS20Diretta出力)

SFORZATO DSP-Dorado(NOSモード・Diretta/LAN DACモード

SOULNOTE A-2

Paradigm Persona B



 まず、Persona Bは非常に「高性能」なスピーカーである。

 上にも下にもまったく不満を感じさせないレンジの伸び、微細なディテールまで精緻に描写する解像感、いともたやすくスピーカーの存在が消えて前後左右上下に音が展開する空間表現力など、現代のHi-Fiスピーカーに求められる能力はいずれも素晴らしいレベルで備えている。価格ではなく能力において、紛れもないハイエンドである。
 特にディテールの描写力に関しては、ポン置きの状態ですら明らかにSapphireを凌駕しておりぎょっとした。Sapphireのデビューは2007年、Personaシリーズのデビューは2016年。そもそもメーカーが違うので単純には考えられないにしても、やはりスピーカーも時代とともに進化するのだなあ、なんて思ってしまった。現に、Dynaudioもこないだついに発売された新Confidenceは大きな進化を遂げているわけだし。

 また、Persona Bの音は自宅で聴いても、やっぱりまったく「うるさくない」。PDNで聴いた際は再生することすら躊躇われたアレやらコレやらをかけまくっても、まったく耳に痛くない。
 Sapphireでは「うるせええええ!」となる曲であっても、余裕綽々に音を解きほぐし、空間にちりばめ、見通しの良さは終始維持される。例えばYURiKA / 鏡面の波のように、音に対する印象が完全に変わった音源も相当数ある。
 なんというか、Persona Bはアニソンの再生にとって福音なのでは……?



 さて、私はDynaudioのスピーカーを形容する際に「雪」という言葉を使っている。

 我が家でじっくり聴いたPersona Bに対して、私は次の言葉を贈ろうと思う。


 「透徹」


 Paradigmだけでなく、数多くのスピーカーメーカーが、自社製品に対して「無色」「透明」という言葉を使っている。
 意図しているところはわかる。しかし正直なところ、私が今まで聴いてきたなかで、本心から「無色透明」と感じたスピーカーは、なかった。
 そんななか、Personaシリーズは掛け値なしで「無色透明」と表現するに値する。特にPersona Bは、私の中でもはや単なる概念になりかけていた「無色透明」という言葉に、強烈な実感と説得力をもたらした。「なるほど、無色透明とはこういうことなのか」と。Persona Bは同シリーズの中でも、「全帯域をベリリウム・ドライバーが担う」という点で特殊であり、ある意味でフラグシップの9Hや7F以上に「Personaシリーズらしい」と言えるかもしれない。

 何度も「無色」と言っている一方で、これは「色彩感の乏しさ」を決して意味しない。
 色彩感に乏しいどころか、スピーカーそれ自体に特徴となる色がないからこそ、再生する音楽の色にそのまま染まる。Persona Bのスピーカーとしての優れた性能、際立った透明感の高さにより、音楽の色が濁ることなくストレートに伝わってくる。
 闇の中に在っては闇のまま。光が差せば俄然輝く。
 熱い曲に水を差すこともなければ、冷涼な曲をぬるま湯に浸けることもない。

 さらに、接続する機材の色にそのまま染まる

 つまり、ユーザー次第でいかようにも染まる
 あぁ、「Persona」シリーズって、要はそういう……
 
 あらゆる要素に徹底して透明である様は、まさに「透徹」と表現するに相応しい。



 ところで、ベリリウムという元素の名前は、「緑柱石/ベリル」という宝石から発見されたことに由来するそうだ。
 そして、純度の高いベリルは無色透明であり、ゴシェナイトあるいはゴーシェナイトと呼ばれるそうだ。
 なお、ベリルは含まれる元素によって様々に色を変える。二価の鉄イオンを含めば水色に染まってアクアマリンと呼ばれ、クロムあるいはバナジウムを含めば緑色に染まってエメラルドと呼ばれ、三価の鉄イオンを含めば黄色に染まってヘリオドールと呼ばれる。ちなみに私の誕生石はアクアマリンである。ちなみに私のメインスピーカーはサファイアである。

 なんとも素敵な符合ではないか。



 Persona Bは純粋に音楽に浸るスピーカーとしても、果てしなきオーディオ趣味の友としても、本当に素敵なスピーカーだ。

 たとえ我が家のメインスピーカーの地位は依然としてSapphireが占めるとしても、幸いにして今の私の環境ではいくらでも活躍の場を用意できる。また、Persona Bという新たな視点のおかげで、あらためてDynaudioやSapphireの美点を確認することもできた。

 どっちがいい?
 どっちもいい!


 一念発起して迎え入れたもうひとつの宝石を、これから大切に愛でていきたい。



 とりあえずスタンドをなんとかしなければ……

Paradigm Persona B用にSound Anchors/サウンドアンカーのスピーカースタンドを導入した



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