Dynaudio Sapphireに今もぞっこん

 平成最後の大晦日に、あらためて愛機への想いを綴ろう。

【レビュー】Dynaudio Sapphire 2007年のTIAS。  その時、奇しくも私は同じくDynaudioのAudience122を見初めばかりだった。そして、B&W...
空気録音で聴くDynaudio Sapphire 再録音&リファレンス音源として2曲追加。  今後、再生システムが大幅に変わるなどして再録音した場合はこの記事も更新予定。 ...

 2007年のTIAS。
 初めて日本に上陸し、会場に展示されていたDynaudio Sapphireに、私は惚れた。

 音に惚れた。
 外観に惚れた。
 佇まいに惚れた。
 存在そのものに惚れた。

 心の底から惚れ込んでしまったのだ。

 しかし当時の私は学生、200万円を越える価格に手が届くはずもなく、Sapphireはただただ高嶺の花でしかなかった。

 時は流れて2012年の春。

 実に幸運な巡り合わせがあり、Sapphireを手に入れるという夢が叶った。
 Sapphireとの再会は、ちょうど私が東京から地元に帰ってきたタイミングとも重なり、なにか運命めいたものを感じてしまった。この時の巡り合わせがなければ、順当にConfidence C1あたりを買っていただろう。

 我が家に迎え入れたSapphireから初めて音が流れ出した、あの瞬間、あの情景を思い浮かべるたびに、今でも身震いするほどの感動と喜悦が私の胸に満ちる。

 さて、スピーカーの位置は今とたいして変わっていないとはいえ、当初のSapphireを鳴らすシステムは今ほど充実したものではなかった。


 Sapphireを鳴らすのは、プレーヤー&プリアンプにLINN MAJIK DS-I、パワーアンプにNmode X-PW10という、それまで使っていたDynaudio Audience122と同じ布陣。足元は間に合わせの薄い人工大理石を敷いてスパイクも不使用。

 そんな環境でも、Sapphireが聴かせた音は、私の想像や期待を軽々と凌駕していた。
 「Sapphireの実力はまだまだこんなものではないはずだ」と強く思う一方で、音楽を聴いた瞬間「これ以上何かする必要あんの?」という大きな満足感が生じてオーディオ熱が拭い去られてしまう、オーディオ熱の幸せな減退を体験した。 

 その後、プロジェクター&スクリーンを導入したことで、スクリーンに合わせてSapphireの位置を微調整し、現在のセッティングが完成した。

 足元のボードを人工大理石からブビンガに換え、相応しい座を得てSapphireが歌う。


 Sapphireは音楽再生だけでなく、マルチチャンネル・サラウンドのフロントスピーカーとしてもAudience122とは異次元の能力を発揮し、センタースピーカーのお株さえ奪い、アンプをNmode X-PM7に換えてさらなる力を見せた。

 LUMIN A1も、SFORZATO DSP-Doradoも、fidata HFAS1-XS20も、ネットワークオーディオに関する素質はもちろんのこと、Sapphireを通して音に感銘を受けたからこそ、導入に到った。音質と快適な音楽再生を両立してこそのネットワークオーディオであり、私が求める音質の根幹を成すものがSapphireなのである。
 そしてSOULNOTE A-2。Sapphireにとって三代目のアンプ。お前は凄い奴だよ

 「Sapphireをいかに気持ちよく鳴らすか」が私のオーディオの大きなテーマであり、そのために今まで走ってきた。かつて所有し、いま所有する「Sapphireを気持ちよく鳴らしてくれた」すべてのオーディオ機器も、一様に大好きだ。

 雪国で生まれ育った耳と魂に福音をもたらす雪のようなスピーカーは、新たな光を浴びるたびにまだ見ぬ輝きで応えてくれた。

 Dynaudio/Sapphireとは異なる方向性のメーカーの素晴らしいスピーカーを聴くたびに、明るく爽快でスパッと切れ味鋭い音を出してくるスピーカーに出会うたびに、「Dynaudioとはいったい……」という、ある種のもどかしさを抱いてきたことも確かである。「Dynaudioなんてやめて○○○を使おうよ」と言われたことも、「なぜ私はDynaudioみたいに根暗なスピーカーを使っているんだ……?」と思ってしまったことも一度や二度ではない。

 それでも、今に到るまでDynaudioに愛想を尽かさなかったのは、私の耳と魂にとって他に代え難い相性の良さと、Sapphireに対する絶対的な信頼があったからだ。もどかしさは愛情の裏返しでもある。
 Dynaudio/Sapphireに対する信頼と愛情を持ち続けることと、他メーカーの製品に感銘と憧れを抱くことは、私の中で決して矛盾しない。

 正直に言って、スピーカーに限らず、「○○ではなく□□を買っていたら……」と思うことは幾度となくある。様々なシステムや様々な取り組みを見て、現在進行形で心をざわつかせることも数多い。

 しかし、見境なく溢れ出すオーディオマニアとしての雑念も、Sapphireの音を聴けば、雪が融けるように流れ落ちる。
 現在のシステムを作り上げたのは、他ならぬ自分自身の決断と選択なのだ。それを自分が愛さずして誰が愛するというのか。そして製品を迎え入れた瞬間の歓喜と、今この瞬間の音に感動することを忘れない限り、システムをアクセサリーで無闇に飾り立てる必要もない。

 オーディオ/ホームシアターに取り組むなかで「よかった」と思うことは数多くあるが、Sapphireと出会えたことはとびきりの僥倖だった。
 価格の高い安いではない。性能の優劣でもない。心の底から惚れ込める製品に出会い、幸運にも迎え入れ、今でも好きでい続けられることが本当に嬉しいのだ。

 何を見ても、何を聴いても、何を感じても、何を思っても、我が家に戻ればSapphireがある。Sapphireを気持ちよく鳴らしてくれるシステムがある。

 「我が家の音が一番良い」とは口が裂けても言えないが、「我が家の音が一番好き」とは胸を張って言えるのである

 雪の夜、灯りを消し、目を瞑り、聴覚だけを研ぎ澄まし、深い闇の中で音楽に浸る。
 すると、私の中に音楽がすっと入ってくる。
 そして、音楽だけが在り、私自身は静寂に到る。
 

 オーディオに目覚めてよかったと心から思う、平成最後の大晦日。

Dynaudio Sapphire 導入10周年 本日は2022年4月14日。  ……  ………… https://audio-renaissance.com/rev...
 
 
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