*

【ネットワークオーディオTips】LINN DS

公開日: : 最終更新日:2016/08/31 PC・ネットワークオーディオ関連, オーディオ・ビジュアル全般

 オーディオ業界に「ネットワークオーディオ」という領域を作り出したのはLINN DSであると言って間違いはないだろう。
 LINN DSの登場は2007年の秋。ついでに言えば、初代iPhoneとほぼ同時期でもある。偶然とは思うが、なかなか運命的なものを感じる。

 私がネットワークオーディオというものに興味を持ったのは2008年、実際にDSを導入したのは2010年なので、初期の初期のDSを取り巻く環境がどうだったのかは分からない。私が導入した時には既にiPadがあったし、ChorusDSもあったし、QNAP TS-119もあったし、(少し調べれば)導入にあたっての色々な情報も手に入れることができた。真に最初期からDSと付き合い、人知れずネットワークオーディオの基礎を作ってきた人々に対し、私は大いなる敬意を表したい。
 最初は現在のようなコントロールアプリなどあるはずもなく、一曲を再生するだけでも大変で、「快適さ」などとは無縁だったらしいが、それが今では押しも押されもせぬ不動の地位を築くに至った。先行者というアドバンテージは勿論あったとは思うが、それだけにとどまらず、DSを通じてネットワークオーディオの可能性を、快適な音楽再生を追求し続けたLINNの情熱が成し遂げた結果だろう。

 2010年、Marantz NA7004とYamaha NP-S2000が発売され、事実上LINN DSしか選択肢のなかったネットワークオーディオという領域はにわかに活気付いた。
 特に、一番安価なDSでも30万という状況に、NA7004の実売8万という価格が与えたインパクトは大きかった。NA7004をきっかけに、日本におけるネットワークオーディオという領域は二度目のスタートを迎えたと言っていいだろう。

 ……ところが、後が続かなかった。マランツにせよ、ヤマハにせよ、オンキヨーにせよ、一年遅れて参入したパイオニアにせよ、「音楽を快適に聴く」という観点が完全に抜け落ちていたのだ。
 「ネットワークオーディオは簡単・便利・快適」、そんな売り文句を大々的に掲げたはいいが、快適さを実現するためには何が必要かというサポートの部分は置き去りにされ、ハードウェア・ソフトウェアを含む製品のトータルの完成度でも、LINN DSの足元にも及ばないことが露見してしまった。
 そしてこの状況は、今も続いている。


 3年ほど前、LINNのCEOや技術者にこんな質問をしたことがある。

「ここんとこ日本のメーカーからも色々とネットワークオーディオプレーヤーが出てるけど、どう思う?」

 返ってきたのはこんな答えだった。

「眼中にないね。彼らは我々がとうの昔に通り過ぎた地点にいるし、我々はもっとずっと先に進んでいる」



 現在、私の知る限り、以下の点を完全に満足するネットワークオーディオプレーヤーはLINN DSだけである。
 (LUMINはとりあえず保留→見事に合格


・FLAC、WAV、ALAC、AIFFに対応

・すべてのフォーマットにおいて192kHz/24bit対応

・ギャップレス再生

・再生中のプレイリストを機器本体に記憶/キュー
(※追記・これはOn-Device Playlist/オンデバイス・プレイリストのこと)


 上三つだけなら、国産機でもだいぶ対応するようになってきた。
 だが、四つ目は未だに実現できていない。実現していたら教えてほしい。
 しかし、これらは「出来るようになったよ! 偉いでしょ!」と胸を張るようなものでもなんでもなく、「快適に音楽を聴くためにはあって当然だろ!」という類のものであることに注意しなければならない。つまり、LINN DS以外は、まだそういうレベルにあるということだ。
 ネットワーク経由でDSDが聴ける? そりゃすごい。で、それがどんな風に音楽体験を豊かにしてくれるの?
 その前にやることがあるだろ! その前に!!

 ネットワークオーディオのメリットとはつまるところ「快適さ」であり、それを実現するネットワークオーディオの本質とは「コントロール」である。オーディオである以上、音質を追求するのは大いに結構だが、「快適さ」を抜きにしてネットワークオーディオを語ることはできない。

 これら以外にも、例えばSongcastなど、LINN DSが音楽生活を快適かつ豊かなものとするために実装している機能は多岐に渡るが、紹介は省く。
 あと触れておくべきなのは、「DSという確固たるソフトウェア・プラットフォームが整備されているおかげで、すべての機種で同一のユーザー・エクスペリエンスが得られる」ということ。基本的な機能について、買ったタイミングによって出来ることが違う、なんてことが(現時点では)起きていない。これは非常に重要なことである。

※追記・参照:
ネットワークオーディオの「プラットフォーム」


 私は別にLINNの信者というわけではない。
 ただし、LINN DSがいかに優れたネットワークオーディオプレーヤーであるかは、過去に所有した経験も含めて、心から理解している。
 また、ネットワークオーディオに大きな可能性を見出した者の一人として、LINNがネットワークオーディオという領域に果たしてきた数多の貢献について、尊敬の念を禁じ得ない。

※追記・参照:
ネットワークオーディオと「OpenHome」
続・ネットワークオーディオとOpenHomeとRoonReady


 ネットワークオーディオという未踏の領域を音質とユーザビリティの両面で切り開き、音楽で暮らしを豊かにしてきた偉大なプレーヤー、LINN DS。
 すべてのネットワークオーディオプレーヤーが、「音楽を快適に聴く」うえでLINN DSと同等の機能を備えた時こそ、ネットワークオーディオの三度目のスタートになるだろう。



【音源管理の精髄】 目次

よくある質問と検索ワードへの回答

スポンサーリンク


関連記事

no image

【BDレビュー】 第190回『KICK-ASS』 北米盤

やる気無さすぎの日本版はスルー余裕でした 画質:8 音質:13 映像はAVC、音

記事を読む

【ホームシアターでゲームをしよう!】はじめに

 今後【ホームシアターでゲームをしよう!】のタイトルで連載予定。 ホームシアターでゲームをしよ

記事を読む

【イベントレポート】ネットワークオーディオ実践セミナー・丹沢電機

【ネットワークオーディオで実現する快適な音楽鑑賞空間の構築】全国横断実践セミナー  6月27日

記事を読む

【BDレビュー】第313回『007 スペクター』

画質:8 音質:10 (評価の詳細についてはこの記事を参照) 映像:AVC 音声:DTS

記事を読む

【Roon & RoonReady】sMS-1000SQ Windows Edition & sMS-200 【Munich HIGH END 2016】

<HIGH END>SOtM、世界に先駆けたRoonServer「sMS-1000SQ Window

記事を読む

BubbleUPnPとJPLAY 6.2がQobuzに対応

 BubbleUPnPがQobuzに対応。  汎用アプリでありながらTIDALとQobuzに両対応

記事を読む

【UHD BDレビュー】第12回『チャッピー』 【Dolby Atmos】

【BDレビュー】第287回『Chappie / チャッピー』 北米盤 画質:12 

記事を読む

【ネットワークオーディオTips】JRiver Media Centerのコントロールアプリ 『JRemote』

 音楽を聴く際にいちいちPCと向き合いたくない。  マウスをカチカチもしたくない。  要は、オー

記事を読む

【TIAS2015】国産ネットワークオーディオプレーヤー、おめでとう!

ヤマハの次世代スピーカー「NS-5000」が披露。ESOTERICはネットワークプレーヤー「N-05

記事を読む

【Roon Server/RoonReady】Mivera Audio Superstream Transport/Server

Mivera Audio  1250ドルのRoon Server。  この価格でCore

記事を読む

スポンサーリンク

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

スポンサーリンク

『オペラ座の怪人』のUHD BD

オペラ座の怪人 4K ULTRA HD&ブルーレイ(3枚組) 初回限定

【インプレッション】Playback Designs Merlot DAC 外観編

Playback Designs Merlot DAC - ナスペック

【菅江真澄紀行文・本編紹介】第一章「栗駒の心臓を御室に見る」

クラウドファンディングサービス「FAN AKITA」でプロジェクトを実

NetAudio vol.25で記事を執筆しました

 この手のおしらせはしばらく放置していたが、これからはマメにやっていこ

「FAN AKITA」のプロジェクトで目標金額を達成しました

小町ゆかりの地「真澄と歩く」出版プロジェクト - FAN AKITA

MQAのソフトウェアデコードって……

MQA Decoding Explained - Audio Stre

LUMINがRoon Readyになったような

 ん?  !?  常時起動の単体Roon Serv

3,000,000PVを達成しました

 言の葉の穴は2017年1月5日をもって3,000,000PV

canarino Fils × JCAT USBカードFEMTO

 canarino Filsの導入当初は、ちょいと思うところがあって、

TIDAL MASTERS with MQA

TIDAL MASTERS TIDAL is deliverin

Roon 1.3のプレビュー

Coming over the hill: the monstrous

言の葉の穴 2016-2017

 「言の葉の穴」読者の皆様、あけましておめでとうございます。  昨年

言の葉の穴 2016年のハイライト 創作・地元ネタ編

 もうすぐ終わるので振り返り。  オーディオだけではないのである。

言の葉の穴 2016年のハイライト オーディオ・ビジュアル編

「言の葉の穴」的2015年のAV関連ニュース10選  独断と

2016年の心残りその2 まだ見ぬOPPO Sonica DAC

OPPO Sonica DAC そして素晴らしいのは、この手の製

2016年の心残りその1 LUMIN、未だRoon Readyならず

Roon Ready、ネットワークオーディオ第五の矢  LU

2015年の心残りは2016年でどうなったのか

2015年の心残りその1 ESOTERIC N-05 紹介記事

【BDレビュー】第341回『帰ってきたヒトラー』

画質:8 音質:8 (評価の詳細についてはこの記事を参

シン・ゴジラのUHD BD

「シン・ゴジラ」が'17年3月22日BD/UHD BD化。初公開映像満

【BDレビュー】第340回『DOOM / ドゥーム』

画質:6.66 音質:13 (評価の詳細についてはこの

→もっと見る

PAGE TOP ↑