最初に、一般的な定義を確認しておこう。今後の話を分かりやすくするために。

 (狭義の)PCオーディオとは何か? →PCとDACをUSBケーブル等で直接つないで音を出すもの。
 (狭義の)ネットワークオーディオとは何か? →サーバーからプレーヤーにLAN経由でストリーミングして音を出すもの。

 捉え方は色々あると思うが、業界的には概ね上記の認識で間違っていないと思う。
 さて、ここでPCオーディオとネットワークオーディオの特徴を比較をしてみよう。
 オーディオ業界界隈で一般的に語られるところだと、


PCオーディオ
・PCとDAC(多くはUSB DAC)を接続する
・接続が簡単(とりあえずUSBDACを用意すれば音は出る)
・OSや再生ソフトなど、自由度が高い
・基本的に操作はPC上で行う
・多種多様な選択肢があり、高音質を追求できる

ネットワークオーディオ
・ネットワークの構築を行う必要があり、不慣れな人にとっては敷居が高い
・NASが必要
・音楽再生の際にPCが不要
・基本的に操作はプレーヤーの本体ディスプレイか、スマホ/タブレットで行う
・操作性が良く、快適な音楽再生が可能


 こんな感じだろうか。
 で、実際にオーディオ業界においてどちらが広まっているかと言われれば、これはもう圧倒的にPCオーディオである。日々雨後の筍のように新製品が現れるUSBDACとは対照的に、ネットワークオーディオプレーヤーは日照り状態が続いている。AVアンプのオマケ機能としてなら相当安価な製品にまで搭載されてきたが、NA7004あたりをきっかけとして生まれた市場も、ほとんど裾野が広がっていないように見える。残念だ。


 ではなぜ、PCオーディオに比べてネットワークオーディオは流行らないのか?
 ……これも色々と理由はあると思うが、私が思うに、おそらく多くのユーザーがネットワークオーディオを導入するうえで期待する『操作性が良く、快適な音楽再生が可能』という売り文句に実態が伴っていないからではないか。ネットワークオーディオプレーヤーを導入したはいいが、さっぱり使い方が分からない。サポートもほとんど機能していない。使ってみてもちっとも便利じゃない。使いこなしたくてもまるで情報がない、云々かんぬん……3年以上日本のオーディオ業界におけるネットワークオーディオの様子を見てきたが、こういった状況はまったく変化していない。結果として、ユーザーはどんどん離れていった。そりゃそうだ。

 経験者として言わせてもらうが、本当の意味で『操作性が良く、快適な音楽再生が可能なネットワークオーディオ』というレベルを実現するのは難しい
 実際に再生を担うハードウェア、快適さの肝となる操作アプリ、さらにユーザー自身によるライブラリの構築が的確に機能して初めて、快適なネットワークオーディオは実現する。このことを認識せず、ノウハウも提供せず、ただいたずらに「ネットワークオーディオは便利ですよー快適ですよー」とユーザーにうそぶいてきた結果が今日の状況である。いったい何がどう便利で快適なのかをまるで示せないまま。
 ネットワークオーディオは決して魔法の類ではない。快適さを実現するためには様々な要素の構築と綿密な準備が必要だ。正直に言って、楽ではない。しかし、実際にそういったことが今の今までユーザーにきちんと伝えられてこなかったこともまた事実である。
 ネットワークオーディオという方法論にオーディオの未来を感じた者として、この状況を看過することはできない。このまま終わらせるわけにはいかない。私は私にできることをしよう。


 話を戻そう。
 PCオーディオとネットワークオーディオ。
 似て非なるものとして、別々のものとして扱われがちな二つの領域。
 しかし、それぞれの特徴をあれこれと考えるよりも前に、両者に共通する極めて重要な事実を認識しなければならない。
 それは、

 『PCオーディオも、ネットワークオーディオも、再生する音源は同じもの』

 ということ。
 すなわち、ディスクの形を持たない、純粋なデジタルファイルとしての音源である。
 
 この事実は、

 『音源の管理を的確に行うことで、PCオーディオとネットワークオーディオの垣根は限りなく低くなる』

 ということに繋がる。
 さらに経験から言わせてもらえば、特にネットワークオーディオにおいて、

 『“快適な音楽再生”を実現するためには、的確な音源管理こそが肝要』

 これに尽きる。
 繰り返すが、的確な音源管理は楽ではない。考えなければならないこと、知らなければならないことは多いし、音源管理をしてからの部分、サーバーだのアプリだの、運用においても関連する要素は非常に多い。機械任せで、全自動でどうにかなるようなものでもない。めんどくさい、やってられない、そういった意見も当然出てくると思う。

 しかし、それらすべてを乗り越えた先にしか、真に“操作性の良い快適な音楽再生”は存在しない。
 ただ、乗り越えるだけの価値は間違いなくあると断言する。

 それに、やってみると意外と楽しかったりする。
 音源管理の過程には「他ならぬ自分自身が手に入れた音源との再会」がある。



 音源管理、そしてネットワークオーディオのゴールとして、具体的には以下のような内容が考えられる。

・視聴位置から一歩も動くことなくすべての音源にアクセス
・自分ルールの厳密な適用による、理想的なライブラリの構築
・ジャンルやアーティストなど、聴きたい曲にたどり着く経路が複数用意されている
・数百、数千枚のアルバムから成るライブラリの中から目当ての曲を瞬く間に再生
・ライブラリへの完全なアルバムアートワーク登録による視覚的選曲
・オリジナル版・リマスター版・ハイレゾ版などのバリエーションを即座に比較可能
・高画質のアルバムアートを仕込み、コントロールアプリを通じて目でも楽しめる

 こんなところだろうか。
 道は長いが、必ず実現できることばかりである。



 ちなみに、これから書いていくことはあくまで“快適さ”を実現するための諸々であって、“音質”を議論するものではないことに注意してもらいたい。
 リッピングソフトによって音質差があるとか、WAVとFLACのどちらが音がいいとか、そんなことを気にする暇があったらゆっくり寝て体調を整えたほうが音が良くなると思う。そういうスタンスである。


 また長くなりそうだ。



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