【2017/01/31更新・追記】

 OpenHomeとは何か、という部分をページ冒頭にまとめた。
 従来のOpenHome発見記的な内容や雑多な記述はそのまま下に残してあるので、興味のある人は続けてどうぞ。

【追記おわり】




 「OpenHome」とは、UPnPをベースに構築されたネットワークオーディオのプラットフォームである。「ネットワークオーディオプレーヤーをまともな音楽再生機器たらしめる諸々の機能」をまとめたオープン規格であり、オーディオ用途に関して言えば、DLNAの事実上の上位/改良版と捉えることができる。

 LINNがDSの開発にあたってUPnPをベースに作り上げたソフトウェア・ライブラリ(Linn UPnP Extensionと呼ばれている)をオープンにしたことで、それを基に「OpenHome」という広く利用可能なプラットフォームが出来上がった。
 既にOpenHomeはLINNの手を離れており、独自の団体(OpenHome.org)として活動している。

 OpenHomeは「UPnPをベースにしている」という点ではDLNAと共通する。
 しかし、ネットワークオーディオの領域では以前から、UPnPとDLNAはほとんど同じものとして扱われている。そしてOpenHomeは機能面でDLNAと一線を画すことから、UPnP(≒DLNA)とは別のプラットフォームとして扱われる場合が多い。
 プレーヤーの仕様が単に「UPnP対応」と書かれていた場合、DLNAとOpenHomeのどちらに対応しているかは注意が必要。大抵はDLNAにのみ対応だが、例外もある。

 「ネットワークオーディオプレーヤーをまともな音楽再生機器たらしめる諸々の機能」とは、ギャップレス再生、On-Device Playlist(オンデバイス・プレイリスト)、一時停止・スキップ・シーク等の操作といった、音楽再生機器として至極当然に備えているべき機能を指す。

 端的に言って、「OpenHomeに対応したプレーヤーなら、まともなユーザビリティが担保されている」というイメージで概ね間違いはない。汎用的に使用可能なOpenHome対応のコントロールアプリも優秀なものが揃っている
 もちろん、最終的にどれだけ快適な音楽再生が実現するかは、音源/ライブラリの管理状況や使用するコントロールアプリの完成度次第である。そして再生操作に対する反応の良し悪しはまた別の話になる。

 ただし、OpenHomeやUPnPとは関係なく、別のプラットフォーム(MPDやRoonなど)を採用して優れたユーザビリティを実現しているプレーヤーやシステムも存在するので、まともなネットワークオーディオプレーヤーはすべてOpenHomeに対応している、というわけではない

 くわえて、「UPnP/DLNA対応だがOpenHome対応ではない」プレーヤーであっても、メーカー純正/専用アプリとの組み合わせで優秀なユーザビリティを実現するものもある。つまり、プレーヤーとアプリの純正組み合わせ時に限れば、DLNAに起因する要領を得ない仕様は克服されている場合が多い。


 なお、OpenHomeとは主として「プレーヤー」と「コントロール」に関連する仕組みであり、「サーバー」は従来のUPnP/DLNAサーバー(Twonky Server、Asset UPnP、MinimServer等)をそのまま使うことができる

 UPnPベースのプレーヤーとコントロールアプリには、「DLNAにのみ対応」「DLNAとOpenHomeの両方に対応」「OpenHomeにのみ対応」の三種類が存在する。プレーヤーとアプリの組み合わせによっては、謎の挙動が引き起こされたり、そもそも使えなかったりするので注意が必要。
 例えば、KinskyBubbleUPnPはUPnP/DLNAとOpenHomeの両方に対応する。

 また、OpenHomeに対応するプレーヤーとアプリであっても、使えない組み合わせが存在する。一言でOpenHome対応と言っても、実装の仕方やら何やらで微妙な差異が生じており、それが相性問題となっているようだ。


参考:
ネットワークオーディオの三要素――『サーバー』・『プレーヤー』・『コントロール』
ネットワークオーディオの「プラットフォーム」
DLNA/UPnPとOpenHome・プレーヤーとコントロールアプリの組み合わせについて

OpenHomeの解説記事をAV Watchで執筆しました






【ここから従来の発見記的な内容】



 まともなネットワークオーディオプレーヤーとまともじゃないネットワークオーディオプレーヤーを区別する要素は色々あるが、とりあえずは「ギャップレス再生」と「On-Device Playlist」の二点に対応しているか否かが重要になる。これらに対応していなければ、そもそも音楽再生機器として甚だしく不適当だと言わざるを得ないからだ。

 最近ではギャップレス再生についてはようやく標準機能と目されるようになってきた感があるものの、まだまだOn-Device Playlistについては絶望的である。

 5年ほど前、少なくとも私がMAJIK DS-Iを買った時点では、LINN DSは何事もないようにギャップレス再生にもOn-Device Playlistにも対応していた。むしろ、特に対応していることを明言すらしていなかった。これらは音楽を再生するうえであまりにも当たり前の機能であり、明言する必要が無いどころか、対応していないこと自体本来であればあり得ないことだからだろう。
 しかし、2010年を皮切りに出始めた国産機は……知っての通りである。


 なぜLINN DSでは当たり前に出来ることが国産機には出来ないのか、ずっと考え続けてきた。もっとも、私はエンジニアでもなければプログラマでもないので、いくら考えたところで結局は想像の域を出ないのだが。
 それでも、ある程度状況は理解できるようになった。

 DLNAというガイドラインがある。
 基本的に国産のネットワークオーディオ関連機器は、このDLNAに対応・準拠しているということを第一に謳っている。
 しかし、個人的な理解で恐縮だが、このDLNAというのはUPnPというより大きな枠組みの中で、AVに関連する機能をうまい具合に抽出して作られたものでしかない。
 よって、「DLNAに準拠/対応している」ということは、必ずしも「UPnPの機能をフルに活用している」ということを意味しない。

 一方で、LINN DSやLUMINといったまともなネットワークオーディオプレーヤーは、そもそも製品説明においてDLNAという単語を使ってすらいない。

 LINN DSの説明ではこうだ。

Compatible with UPnP™ media servers and UPnP™ AV 1.0 control points


 LUMINの説明ではこうだ。

UPnP AV protocol with audio streaming extension


 つまり、DLNAにとどまらず、UPnPの領域にまで踏み込んでシステムを作り込むことが、On-Device Playlistの実装を含む、まともなネットワークオーディオプレーヤーの条件になっている。

 ……というのが、私の個人的な理解だった。


 この理解に関連して、ひとつの単語がある。
 それが「OpenHome」である。

 以前から断片的に耳にしていた言葉ではある。
 おそらく最初にOpenHomeという言葉を意識したのはこの記事だろうか。


リン、新たなDS操作ソフト「Kazoo」と独自サーバーソフト「Kazoo Server」 – Phile-web

Kazoo ServerはUPnP/AVメディアサーバーと、OpenHome Media Server(ohMedia)をベースとするメディアサーバーで、現時点ではMac用とWindows用が用意されている。


 当時は「ふーん、UPnPの他にそんなのもあるのか」くらいに思って軽く流していたが、ある情報が出たことで状況は一変した。
 国産の麒麟児、スフォルツァートのプレスリリースである。

■ 株式会社アルファシステムズにopenHome互換の実装を発注しました。完成は6月初旬。完成するとDST, DSPシリーズがopenHome互換のコントロールアプリ(Linn社Kinskyを始め、iOSのSongBook HDやAndroidのBubbleDSなど多数)で操作可能になります。(NEW)


 ん?
 OpenHome互換??
 SongBook HDにBubbleDS???

 何やら面白いことになってきた。


 私の知る限り、SongBook HDBubbleUPnPも、OpenHomeに対応するとも互換性があるとも書いていない。と思ったら、BubbleDS Nextには「OpenHome Renderer」なる記述がある。そしてSongBook HDにも「Linn compatible players」という記述がある。
 OpenHomeとはLINN DS的なネットワークAV機能を指すのだろうか?


 むむむ。
 やっぱりそのものを調べるのが一番手っ取り早い。


OPENHOME


 OpenHome、あるいはohMedia(OpenHome Media)。
 要は、「UPnP/DLNAに替わるネットワークAV機能実装のためのソフトウェア・ライブラリ」だと理解すればよさそうだ。

・Easier to program against.
UPnP forum services have large numbers of optional features. While this makes it easy for device manufacturers to implement a service, it is hard to write control points and interoperability between devices becomes poor. ohMedia uses options sparingly, typically at a service level. This enables clear, consistent behaviour across devices from different manufacturers.

 ふむ。
 UPnPは色々拡張できる余地があるけど何かとめんどくさいし、やればやるほど機器同士の互換性に問題が出るようになる、と。
 確かにそれは諸々のネットワークオーディオプレーヤーやコントロールアプリを使っていて感じることではある。

 一方で、OpenHomeの利点(の一部)として、以下のような内容が示されている。

・Better support for playlists
Playlists are stored on the renderer, allowing playback to continue when the control point leaves the network (e.g. your tablet goes to sleep, runs out of battery, or leaves the wifi zone).
Multiple control points are supported. A second controller can discover and display a playlist setup by a different device. Edits to the playlist from either controller will be immediately reflected in the other.
Storing playlists on the renderer also allows for gapless playback, avoiding gaps between tracks that were intended to merge seamlessly. This is particularly important for live albums and classical music.

 これはまさに「On-Device Playlist」そのものである。
 そしてOn-Device Playlistに対応するからこそ、ギャップレス再生も楽々クリアするということのようだ。

 なんとなく状況が見えてきた。

 OpenHomeとは、つまりLINN DSがUPnPの拡張でとうの昔に実装していた「ネットワークオーディオプレーヤーをまともな音楽再生機器たらしめる諸々の機能」を、割と簡単に実現するための仕組みのようだ。
 はじめからUPnPを活用してきちんとシステムを構築すれば済む話だが、それが「出来ていない」メーカーがあまりにも多いがために、気を利かせた人が、「OpenHome」という名前で必要な機能をパッケージ化した、といったところか。

 で、スフォルツァートの言うOpenHome互換のコントロールアプリとは、要は「まともなネットワークオーディオプレーヤーと組み合わせてこそ真価を発揮する」類のアプリを指すのだろう。となると、OpenHomeはUPnPとは別と言いながら、実質的に両者にはある程度の互換性があるということになる。プログラムのレベルで互換性があるのか、それとも単に両方実装されているだけなのかは分からないが、今更UPnP対応機器を完全に駆逐するわけにもいかないだろうし、いずれにせよ妥当な判断と言える。これが「alongside」と言う理由か。

Reference Implementations
・ohMediaPlayer – cross-platform software renderer including both OpenHome and UPnP forum network services. Capable of being deployed to desktop or embedded platforms.
・Songbox – media server including both OpenHome and UPnP forum network services. Capable of being deployed to desktop and some NAS platforms.
・Songcast – application that sends local audio to an ohMedia renderer. Available for Windows & Mac.
・Kinsky – control point for ohMedia renderer. Available for all major desktop and mobile platforms.

Some of these products are released with Linn Products branding. All are based on generic OpenHome technology. We’d be happy to hear from anyone who wants to work with us to simplify skinning of these products.



 LINNはかねてから、DSを開発するにあたって作り上げたソフトウェア・ライブラリをオープンにしてきた。結果的に、それを基にしてOpenHomeが誕生した。
 ネットワークオーディオという領域を皆で高めていこうというこの姿勢。まさしく王者の貫禄である。偉大すぎる!

 ……まともなネットワークオーディオプレーヤーが増えて市場が拡大する。今まで磨き上げてきた製品の完成度をもってすれば、なおその中で高いシェアを獲得できる。結果的に自らにとって大きなプラスになる。そうLINNは踏んだのだろう。


 OpenHomeについてあらためて整理すると、「ネットワークオーディオプレーヤーをまともな音楽再生機器たらしめる諸々の機能をまとめ、オープンに利用可能にした標準規格/プラットフォーム」ということになる。

 なお、OpenHomeとは主としてプレーヤーとコントロールに関連する仕組みだと考えていい。そして、ベースとなったUPnPとの繋がりも非常に強い。
 ことサーバーに関して言えば、Twonky ServerやらAsset UPnPやらMinimServerやら、今までUPnP/DLNAの文脈で普通に使ってきたサーバーソフトがそのまま組み合わせ可能。OpenHome対応サーバーが云々と悩む必要はない。
 ただし、コントロールアプリに関しては、「UPnP/DLNAしか見ていないアプリ」・「UPnP/DLNAとOpenHomeの両方で使えるアプリ」・「OpenHomeしか見ていないアプリ」の三種類があるので要注意。例えばUPnP/DLNAしか見ていないアプリをOpenHome対応プレーヤーで使おうとすると謎の挙動を引き起こしたりする。そういう場合は素直に使うアプリを変えよう。


 OpenHomeは既にLINNの手を離れ、独立した団体として活動しているようだ。
 コントロールアプリとしてKazooが推奨されているあたり、影響力は残っていそうだが。


 極端な話、DLNAだのUPnPだのOpenHomeだの、そんなものはどうでもいいのだ。
 何を使おうが、要はメーカーがまともなネットワークオーディオプレーヤーを作ってくれさえすればそれでいいのである。

 もしかしたら、今後は「OpenHome対応/互換」というのがひとつのトレンド、あるいは「まともな音楽再生機器であること」の保証になるのかもしれない。
 そして、海外のメジャーなブランドのネットワークオーディオプレーヤーは、既に大方OpenHomeに対応しつつある。
 遅れているのはどこか、もはや言うまでもないだろう。



「On-Device Playlist」(オンデバイス・プレイリスト)について

ネットワークオーディオプレーヤーにおける世代間断絶と、本当に求められるもの

BubbleUPnP Serverを使ってプレーヤーをOpenHomeに対応させる

【音源管理の精髄】 目次 【ネットワークオーディオTips】

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