Paradigm(パラダイム)のスピーカー、「Persona」シリーズ

 オーディオ趣味を始めて間もない頃から存在を知りつつも日本では触れる機会すらなかった、そんなParadigmが今になって日本に上陸を果たすというのはなかなか感慨深い。
 機会があれば是非聴いてみたいものだ。


 先日Paradigmを取り扱うPDNに行って聴いてきました。


 聴いたのはブックシェルフ「Persona B」と、トールボーイ「Persona 7F」。Persona Bはサウンドアンカーのスタンドに設置されていた。Persona 7Fはスパイク。


 Persona Bはツイーター&ミッドレンジの両方でピュアベリリウム振動版を採用し、「全帯域をベリリウムが担う」という凄まじい内容。税別価格はペア150万円。


 Persona 7FはPersonaシリーズのパッシブタイプのトールボーイスピーカーとしてはトップモデル。税別価格はペア480万円。さらに上位にはアクティブウーファーを搭載するハイブリッドタイプの「Persona 9H」がある。


 それにしても、この「アリアブルー」仕上げが美しいのなんの。

 記憶に近付けるために色調補正しまくった上の写真でも伝えるのが難しく、さらに公式ページの製品写真では妙に紫めいたマットな質感に見えるが、実際は細かなラメの入った光沢&煌めき感が実に素晴らしい色合いである。例えるならば「高感度で撮った星空」


 再生環境はまだ試聴室を用意できていないとのことでオフィスの一角。空間の広さそのものはじゅうぶんにある。


 再生機器は以下の通り。

clearaudio Ovation(アナログ)
Bluesound NODE 2i(ファイルトランスポート)
Marantz SA-10(CD・DAC)

EAR 912(フォノ/プリアンプ)

Fundamental MA10(パワーアンプ、モノラル使用)

Persona



 最初にPersona Bを聴いた。私自身、Persona Bに対する興味の方が大きかった。


 ……


 …


 私が今まで聴いてきたあらゆるスピーカーのなかで、最も「うるさくない」

 かといってそれは「柔らかい音」や「緩い音」を決して意味しない。
 凄まじい切れ味と描写力と解像感を持ちつつ、まったく歪みっぽいところがなく、どれだけ音量を上げてもまるで不快感が生じない。この驚くべき「歪みのなさ」は、ベリリウムドライバーの威力もさることながら、デザイン上の特徴でもある「Perforated Phase-Aligning」という名の音響レンズの効果もあるのだろう。実際、あまりにも音楽が耳馴染みよく入ってきたので、気付けば相当な音量にまでボリュームを上げてしまっていた。
 ダイレクト感満載の「John Butler / Ocean (2012)」は演奏のテンションやギターの切れ味を見事に描写しつつ耳に痛いところがまるでない。そして(失礼ながら)「音源の時点でうるせえ! となる曲」の代表として「the pillows / Fool on the Planet」を大音量で鳴らしても、やはり不快感なくすんなり聴けてしまう。これは驚異だ。
 はじめてPersonaシリーズを見た時は、音響レンズに対して「なんだ、この……何?」と思い、「これ外した方がいいんじゃないか?」とさえ思ったものだったが(ちなみに外れないとのこと)、Perosna Bを聴いてそんな思いは吹っ飛んだ。

 出音はベリリウムと聞いて想像していたような煌びやかさはそれほど感じられず、あくまでニュートラル志向のようだ。例えば、輝かしい高音が強い印象を残す……というような性格ではない。ごく自然に音が出て、ごく自然に伸びて、ごく自然に消えていく。素の性能が極まり、在るべき音を在るべきタイミングで完璧に繰り出せるからこそ生じる、「自然」という感覚。
 パッと聴いた時に恐ろしいほどの素性の良さを感じる一方で特に派手さはないので、むしろ玄人好みの音と言えるのかもしれない。もちろん曲に応じて多種多様な音色を変幻自在に描き分ける能力は有しているので、地味な音というわけではない。

 ボーカルはKOKIAを聴く限り、潤いや艶やかさよりも「精緻にして峻厳」という言葉がよく似合う。とはいえ何度も述べているように歪みっぽさとは無縁なので、ひたすらに声の凄みが際立つ。もっとも、この辺りは組み合わせる機器によっても変わってきそうだ。

 低音はあまり聴いたことのない不思議な出方をしていた。
 確固たる「重さ」や「硬さ」を感じる低音が、「軽々と」スピーカーから放たれる。この「軽々とスピーカーから音が出る」という感覚は中高音から低音に到るまで段差なく繋がっており、再生音に揺るぎない一体感がある。これぞ「フルレンジ・ピュアベリリウム」の為せる業か。低音の量感自体はブックシェルフということもありほどほどながら、非常に深いところまで沈んでいる。

 Persona Bは真摯なオーディオ再生に応える傑出した能力を持ちながら、驚くべき「歪みのなさ」によって音楽に没頭することのできる、素晴らしいブックシェルフスピーカーだと感じた。


 続いて、Persona 7Fを聴いた。

 こちらも基本的な音の方向性はPerosna Bと共通。驚くべき歪みのなさも健在。トールボーイなだけあって明らかにワイドレンジになるとともに描かれる空間も一気に広がる。低域の描写力の向上や全体の情報量の増大により聴き応えも大きく増して、よりおおらかに音楽を楽しめる音になっている。余裕綽々のハイエンドスピーカーといった印象で、良くも悪くもPersona Bほどの強烈なインパクトはない。

 Personaシリーズのトールボーイスピーカーはウーファーの振動版はベリリウムではないため、Persona Bのように「フルレンジ・ピュアベリリウム」とはいかない。それでも、中高音と低音が乖離しているような印象はなく、まとまりの良さはじゅうぶんに感じられた。さすがにPersona Bのような揺るぎない一体感までは感じられなかったが、逆にそれはPersona Bだからこその強みと言えるだろう。

 先に聴いたPersona Bの印象が強すぎたためにPersona 7Fについてそれほど書くことがなくなってしまっているが、Persona 7Fもまた傑出した能力を持ったスピーカーであることに疑いはない。特に低域の再生能力に関しては底知れない余裕を感じたので、サラウンドのフロントスピーカーとして用いた時にどれほどの力を示すかも気になるところだ。さらに、Persona Bとあまり価格の変わらないトールボーイのPersona 3Fもおおいに気になるところだ。

 ちなみにPersona B・7Fともに伸び伸びと鳴っており苦しい印象はなく、MA10の駆動力に不安は感じられなかった。



 ハイテク素材や構造を徹底的に吟味追求して作られた、現代的なハイエンドスピーカーには競合も多い。B&Wは言うに及ばず、同じくベリリウムをツイーターに採用しているフォーカル、最近ますますラスボス感が強まっているYG AcousticsやMAGICOもいる。

 Paradigmは日本に導入されて間もないブランドということもあり、まずは多くのオーディオファンにPersonaシリーズの音に触れてほしいと思う。

 特に「最強のブックシェルフ」を求める人にとって、Persona Bは必聴のスピーカーとなるだろう。



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