【2017/12/30 アプリの正式リリースに伴い記事を更新】



コントロールアプリの重要性

 音源の背後にあって全てを統括するタグ、全身全霊で構築したライブラリ、鬼気迫る執念で蒐集付与したアルバムアート、己の理想を叶えるために選別したサーバーソフト、十全な操作を受け止め得る仕様を備えたプレーヤー。
 血と汗と涙を流しながら取り組んできた音源の管理運用、そして【ネットワークオーディオ】は、まさにこのコントロールアプリで完成・完結する

(中略)

 コントロールアプリはなぜ重要か。

 先の記事で、ネットワークオーディオの本質とはコントロールであり、ネットワーク越しに再生機器からコントロールを独立させることだと書いた。

 すなわち、ネットワークオーディオにおいては、再生やら停止やらスキップやら、音楽再生に関わるすべての操作はコントロールアプリ上で行うことになる。音楽再生の最後の最後、実際に手に触れる部分を、このコントロールアプリが担うのである。これがどれだけ重要で、どれだけ快適さを左右することになるのか、多くを語る必要はないと思う。




 ネットワークオーディオにおけるコントロールアプリの重要性を言い続けて幾星霜。

 ついに、国産初(国産という部分が重要)のOpenHome対応のコントロールアプリが登場した。
 はたしてそれは祝福に足るものか、否か。



【基本情報】

製作:アイ・オー・データ
対応プラットフォーム:OpenHome/DLNA
汎用・専用:名前のとおり基本的にfidata用のアプリだが、汎用的に使用可能
対応OS:iOS(※)
スマホ・タブレット:両対応
縦画面・横画面:iPhoneは縦のみ・iPadは両対応

※Android版はまだ

検証時のバージョン:1.0.1
バージョン1.02でJPLAYStreamerで使用可能に

→2018/08/06にバージョン1.1.0になり、複数の機能が追加されるとともに速度も大幅に向上した。



【機能】

再生:○
一時停止:○
停止:×
曲送り(スキップ):○
シーク:○
ランダム:○
リピート:○
音量調整:○
ミュート:○
プレイリストでの再生管理:○
プレイリストの保存:○
タイル表示:○
音源の検索:○
アルバムアートの拡大表示:○
アルバムアートの縦横比維持:○
高解像度対応(Retina):○ iPad Pro 12.9インチにもネイティブ対応
音源のスペック表示:○
電源のオンオフ:※
機器の再検索:×
接続のロック:○

※サーバーにfidataを選択した時、fidataの電源操作が可能



以下、iPad Pro 12.9インチ(2017) / iPhone 8にて検証

適宜画像の拡大表示を推奨。



【全体的なデザイン】

 うむ。


 プレイリストが左にあるSongBookの系譜ではなく、右にあるKinskyの系譜に属するようである。


 fidata Music Appの面白い特徴として、プレイリスト領域とブラウズ領域の大きさをリニアに変えられるというものがある。
 ブラウズ領域を広げたり、


 プレイリストをめいっぱい表示させたりできる。


 ブラウズ領域のアルバムアートはピンチイン/アウトで拡大縮小可能。


 参考までに、ブラウズ領域にめいっぱい表示させるとこんな感じ。


 比較対象①:Kazoo


 比較対象②:LUMIN App


 なかなかのものだ。


 iPadを縦に使うと、ブラウズとプレイリストを画面ごとに切り替える方式になる。要は「でかいiPhone版」のイメージ。



 iPhone版。





【再生画面】

 標準状態で画面下に表示されている再生情報をタップするとこの画面に切り替わる。
 曲名・アルバム名・アーティスト名が力いっぱい表示されるのが特徴と言える。


 iPad・横ではさらにアルバムアートをタップすると全画面表示になる。


 ただ、アルバムアートの縦横比次第では、iPadの表示領域のすべては使われない。






 iPad・縦だとこんな感じ。


 iPhone版。




【プレイリスト関連の挙動】

 音源をタップした際の標準の挙動として、「プレイリストを上書きしてすぐに再生」なのか、「プレイリストの末尾に追加してすぐに再生」なのか、「現在再生中の曲の次に追加」なのか、「プレイリストの末尾に追加」なのかを選択できる。うむ。


 アルバムタイトルまたは曲名を長押しタップで、その都度登録時の挙動を選択することもできる。



 曲リストまで降りずとも、アルバムの時点でプレイリストに登録することもできる。ここでも登録時の挙動が選択できればなおよい。



 現在のプレイリストの「ローカルプレイリスト」としての保存、


 プレイリストのクリア(確認つき)にくわえて、


 なんとfidataのマニュアルまで表示できる。



 プレイリストへの登録は通常のタップのほか、曲の右に表示されている[三]を押したまま、指先でずいーっとプレイリストの目当ての場所に追加することが可能。これはTechnics Music Appの美点だった。


 あとはプレイリスト内の曲順を動かしたり、



 すいーっと削除したり。


 基本かつ核心的な部分はしっかりとおさえられている。



【音源のブラウズ】

 まず、初期設定では画面左上に「ジャンル/アルバム」「フォルダー」といった、Twonky Serverのナビゲーションツリー項目のショートカットが用意されている。これでいちいち階層を戻らずに各項目に飛べるのだが、このショートカットが機能するのはTwonky Serverのみのようだ。


 アルバムの中の曲を長押しタップして「詳細情報」を選択するとこんなのが出る。


 fidataが採用しているサーバーソフトでもあるTwonky Serverを使うと、ちょっと見た目が楽しい。


 画面左下のサーバー名をタップするとメニューが開き、そこから「ローカルプレイリスト」を選択すると、保存されているローカルプレイリストにくわえて、より詳細な検索機能が使える。
 「よく再生する曲」はどの程度の期間の集計なのかはちょっと不明だが、趣味がばれる危機である。



 さて、fidata Music Appは純粋にサーバー内の音源をブラウズすることにくわえ、日本の音楽情報データベースである「CDジャーナル」と連携する機能を持っている。
 例えばLUMIN AppやJRemoteは「Last.fm」と連携することができ、Roonではもっととんでもないことになるわけだが、それらで利用できる情報はあくまでも英語圏の情報である。それがfidata Music Appでは「日本語の情報」が利用できるということで、今までにない特色・強みとなっている。

 アルバム長押しから「アーティスト情報の検索」で……
 !? さすがにバージョンが多いなあ……


 アルバム内の曲リストの[i]でも同じ挙動となる。

 
 まあ、せっかくなので。







 こりゃーいい。

 これらの情報はいくらでも活用のし甲斐があるので、今後に期待しよう。



【機器の選択】

 画面左下でサーバーの選択。ローカルプレイリストやアプリの設定もここから。


 fidataであれば、さらにファイル操作までもが可能になるようだ。(上の画像はベータ版のもの)


 画面右下でプレーヤーの選択。
 fidata以外のプレーヤーでも使えるの図。



【その他の機能】

 「fidata Music App 設定」ということで様々な項目が用意されている。


 デフォルトの背景色を白黒から選べたり、アルバムアートに応じて色を変えたりとか。

 画期的な設定項目としては、「画面レイアウト」がある。


 お好みでどうぞ。ちなみに私はChorusDS HDとLUMIN Appの流れからいってレイアウト3がいいかな……



 正式公開を経て、いくつかの機能が実装されている。



 まずはfidataの状態表示。


 ここからブラウザの設定画面も開ける。



 続いて「ファイル操作」。

 フォルダの階層を音源ファイルまで降りていき、「操作」をタップ。


 操作する音源ファイルを選択して……


 操作内容を選択する。


 コピーとか削除とかいろいろあるが、気になるのはやはり「tag.edit」、つまり「タグの編集」だろう。

 編集画面・項目ともによく練られている。アルバムアートの付加・変更も行える。
 正体不明の音源をゼロから編集するのはさすがにどうかと思うが、fidataに入れた後の音源を手直しするレベルであればじゅうぶん使えそう。








【速度計測】

プレーヤー:SFORZATO DSP-Dorado(ファームウェア:4.00.03)
サーバー:fidata HFAS1-XS20(ファームウェア:1.50)

 「プレーヤー」と「サーバー」を固定して、アプリの速度を計測する。
 コントロール端末にはiPad Pro 12.9インチ(2017)とNexus 9(BubbleUPnPのみ)を使用した。


アプリを起動

Twonky Serverの「ジャンル/アルバム」を選択

ジャンルの「Rock」を選択

125枚のアルバムアートをすべて表示させる
スクロールの時間も含む

CDフォーマットのアルバムを全曲プレイリストに登録して再生

音が鳴る

止める(音が止まるのを確認)

プレイリストをクリア(クリアされたのを確認)

192kHz/24bitのアルバムを全曲プレイリストに登録して再生

音が鳴る

プレイリスト内の3曲目を再生(音が鳴るのを確認)

止める(音が止まるのを確認)

5曲目を再生(音が鳴るのを確認)

止める(音が止まるのを確認)

プレイリストをクリア(クリアされたのを確認)


 という、日々の音楽再生を想定した操作アプリを終了させた状態から3セット行い、完走に要する時間を計測する。
 アプリのデザインが非効率的だったり、各種操作が煩雑だったり、アルバムアートの読み込みが遅かったりすれば、それだけ時間がかかることになる。

 なお、DSP-Doradoは再生する音源のサンプルレートが変わると再生が始まるまでにタイムラグが生じるため、計測に際しては44.1kHz/16bitをすぐに再生できる状態にしている。
 ちなみに、私のライブラリは(音源に仕込んだ画像的な意味で)猛烈に重い。


fidata Music Appの結果:

1回目:64.80秒
2回目:55.40秒
3回目:58.22秒


参考・LUMIN Appの結果:

1回目:32.15秒
2回目:31.60秒
3回目:34.31秒


参考・Kazooの結果:

1回目:46.33秒
2回目:41.22秒
3回目:37.78秒


参考・BubbleUPnPの結果:

1回目:86.83秒
2回目:46.36秒
3回目:40.80秒


 はっきり言って遅い。
 アルバムアートの読み込みに時間がかかり、なおかつ読み込んだ画像をキャッシュしないようで、アプリを立ち上げるたびに読み込みが発生している。この辺でBubbleUPnPと大きな差が生じている。


 続いて、Twonky Serverの「アルバム」を選択し、839枚のアルバムアートをすべて表示させるアルバムアートマラソンを行う。
 大量のスクロールが必要なので、私自身の運指でも時間は結構左右される。


fidata Music Appの結果(ブラウズ領域を最大化して計測):

1回目:87.82秒
2回目:87.42秒
3回目:66.60秒
※「アルバム」を選択しても全アルバムが表示されず、もういちど「アルバム」を選択すると全部表示されたのでその操作込みの時間


参考・LUMIN Appの結果:

1回目:9.33秒
2回目:7.46秒
3回目:6.95秒


参考・Kazooの結果:

1回目:あまりにもアルバムアートの取りこぼしが多く計測断念
2回目:79.13秒 アルバムアートの取りこぼし多数
3回目:あまりにもアルバムアートの取りこぼしが多く計測断念


参考・BubbleUPnPの結果:

1回目:170.60秒 アルバムアートの取りこぼし多数
2回目:22.85秒
3回目:17.00秒


 相変わらず速度面に関してLUMIN Appの一強は揺るがないわけだが、「データをキャッシュした状態」という条件付きでならBubbleUPnPも依然としてすこぶる優秀である。端末の性能差を考えれば大健闘と言える。


→2018/08/06にバージョン1.1.0になり、複数の機能が追加されるとともに速度も大幅に向上した。



【所感】

 機能的には、完成度は極めて高いと言っていい。
 SongBook、ChorusDS、Kinsky、Kazoo、LUMIN App、JRemote、BubbleUPnPといった偉大な先達をしっかりと研究し、それぞれの美点をうまい具合に抽出して組み合わせた結果の、見事な出来映えである。

 端的に言って、「ネットワークオーディオのなんたるかを完全に理解・把握したうえで、欲しい機能を全部入りで作り上げたアプリ」である。これで酷いアプリが出来上がるわけがない。
 さらに、CDジャーナルとの連携は、現実的にどこまで発展・展開するか未知数な部分もあるが、ともすればRoonが切り開いた境地を「日本語で」見せてくれるという可能性も感じる。

 しかも、fidata専用というわけではなく、他のDLNA/OpenHome対応プレーヤーでも使用可能という太っ腹である。

 ただ、検証の結果示されたように速度面では大きな課題がある。安定性やスクロールがガタつく点も要改善。
 「ライブラリの音源をブラウズし、好きな曲を好きなように聴く」ためのデザインや機能は最初から完成されている感があるので、速度面さえ改善されればもう最高だ。
 SongBookもChorusDSもLUMIN Appも、「元から良かったものがさらに進化した」ことで、最終的な完成度を獲得した。fidata Music Appにもさらなる進化を望みたい。



 随分と待った。
 こういう完成度の高いネットワークオーディオのコントロールアプリが、ついに「国産で」産声を上げたことが、本当に喜ばしい。



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