「純粋なネットワークオーディオ」への憧憬
続・「純粋なネットワークオーディオ」への憧憬


 昨今のファイル再生において、狭義のPCオーディオでも狭義のネットワークオーディオでも、もはや「出来ること」は変わらない

 私の場合、オーディオにファイル再生を最初に取り入れた時のスタイルが狭義のネットワークオーディオだったことは事実ながら、別にPCの存在を否定するつもりはない。
 現に、単体Roon Serverとして、さらに「PCオーディオ対ネットワークオーディオ」という不毛な対立の構図を粉砕する「デジタル・ファイル再生の原器」として、canarino Filsも導入した。実際にハイスペックかつファンレスなオーディオ用PCの存在はあらゆる局面で大きな威力を発揮している。
 canarino Filsのおかげで、たとえ下流にUSB DACが来たところで、音質的な懸念をする必要はない。コントロールアプリは色々とあるし、裏技もあるし、ネットワークオーディオの実践には困らない。細部の違いこそあれど、実現するユーザビリティの質もLUMIN A1使用時と大差ない。

 私が「狭義の」とか「いわゆる」とかを付けず、単に「ネットワークオーディオ」と言う時、それは「音楽再生におけるコントロールの方法論」を意味する。つまり、再生機器に何を使うかは問題ではないのである。

 DSD256とかいう冗談のようなスペックで、なおかつきちんと聴きたい音源が現に存在するということもあり、LUMIN A1の導入から3年が経過した辺りから、「そろそろ……」という思いが強まっていた。
 そして前述のとおり、LUMIN A1の後釜としてUSB DACを導入したところで、「ネットワークオーディオの実践」という意味では何の問題もない。実際、Chord DAVEBricasti Design M1 SE mk2といったハイエンドな製品だけでなく、Nmode X-DP10SOULNOTE D-1といった(あくまでも相対的に!)手頃な製品の音質にもたいへん感銘を受けた。乗り換えようと思えば乗り換えられたし、無限の資金力があれば(残念ながらそんなものはない!)全部システムに迎え入れたかった。



 それでも、やっぱり、私は「純粋なネットワークオーディオ」に対する憧憬を消し去ることができなかった。

 LINN DSの存在を知り、それがもたらすものを体験し、そこに巨大な可能性とオーディオの未来を見出して以来、下図のようなシステムを志向せずにはいられないのである。


ネットワークオーディオ虎の巻07


 というわけで、考えに考えた結果、「プレーヤー」にSFORZATO DSP-Dorado、この際だからということで「サーバー」にfidata HFAS1-XS20を導入した。実は三週間ほど前の時点で導入していた。



 DSP-DoradoはLUMIN A1の後釜として、純粋な音質はもちろん、とにかく様々な点でタイミングが良かった。
 オプションで底板強化もした。
 
 HFAS1-XS20については、ネットワークオーディオのシステムにおける「サーバー」の存在に決着をつけたかったのにくわえて、もっと単純に、アレコレ考えずとも安定して動作する、普段使いで最高の音質を発揮するサーバーがほしかった。
 強いて決め手を挙げるとすれば、「純粋である」というところか。

 ……ふたつ同時というのは正直やり過ぎた感がある。いろいろとつらい。



 さて、「純粋なネットワークオーディオ」を志向したと言いつつ、USB DAC全盛という時代情勢に対してちょっと怖気づいて、DSP-DoradoにはオプションのUSB入力も付けた。これで「USB DACか、ネットワークオーディオプレーヤーか」という問題も吹っ飛んだ。DSP-DoradoはLANとUSBで再生可能なフォーマットに差がないので、canarino Filsを完璧に活かせる環境も整ったことになる。
 さらに「サーバー&プレーヤー」にHFAS1-XS20、「USB DAC」にDSP-Doradoという使い方もできる。HFAS1-XS20はcanarino Filsにとってもこれ以上ない好敵手となろう。

 SFORZATOの再生エンジンとfidataの再生エンジンははたしてどちらが上なのか。あるいは、強豪ひしめく再生ソフト群と比べた時、SFORZATOとfidataの再生エンジンはどのようなパフォーマンスを示すのか。
 そもそも接続に使うケーブルが違うということもあり、純粋な比較は難しいのだが、ユーザーとしては興味のあるところだ。



 最後に、導入から3年半の長きに渡って我が家の再生システムを支え続けてくれたLUMIN A1に対し、このうえない感謝の言葉を送りたい。



 LUMIN A1は「そもそもLINN DS以外にまともな(よく出来ているという意味ですらない)ネットワークオーディオプレーヤーは存在するのか」という絶望をLUMIN Appとの組み合わせによって瞬時に粉砕し、また上位機種のS1が登場した後でも、音質的魅力を維持し続けた。
 USB DACに比べてネットワークオーディオプレーヤーという製品ジャンルがちっとも盛り上がらず、機能と音質の両面でファイル再生の主戦場がPCとUSB DACに移行してもなお、継続的なアップデートのおかげで、少なくとも機能面において陳腐化の悲しみを味わうことはまるでなかった。それどころか、TIDAL、Qobuz、Roon Ready、MQAへの対応など、常に先頭を走ってきたと言ってもいいだろう。
 そして何より、「快適に音楽を聴く」という点で、LUMINのプレーヤーはあらゆるファイル再生のシステムの中で未だ最高クラスでだと信じて疑わない。こればっかりは、SFORZATOでも敵わない。

 傑出したネットワークオーディオのブランドとして、LUMINの今後益々の繁栄を願う。

 そしてどうか、LUMIN Appから他社製プレーヤーを締め出しませんように。



 SFORZATO DSP-Dorado。

 fidata HFAS1-XS20。

 長い付き合いになりそうだ。



【レビュー】DSP-Dorado

【レビュー】fidata HFAS1-XS20


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