*

LANケーブルで音は変わるか?

公開日: : 最終更新日:2014/12/15 PC・ネットワークオーディオ関連, オーディオ・ビジュアル全般

【ネットワークオーディオの魔境を往く】 – いったい何が始まるんです?



 ネットワークオーディオに真面目に取り組もうとすると、一度はこの問題にぶつかることだろう。私もその口だった。
 2010年の秋、すなわちNA7004やNP-S2000が発売されたりNet Audioが創刊されたりといったあたりから、「オーディオ用LANケーブル」というジャンルもにわかに活気付いたことを覚えている。覚えている人も多いとは思うが、当時はAIM電子のシェルディオという、やたら硬いらしいケーブルに評価が集中していたように思う。残念ながら聴いたことはないが。

 MAJIK DS-Iを2010年の春に導入した私にとっても、この問題は非常に悩ましいものがあった。
 当初は「LANケーブルなんかで音が変わってたまるか!」と思っており、その辺に余っているLANケーブルを使っていたのだが、前述の盛り上がりもあり、「試しもせずに決めつけるのはよくないな……」ということで、PC用ではない、いわゆるオーディオ用のLANケーブルを購入した。

 audioquestのRJ45Gという、かなり以前からあった製品である。たしか2mで3500円程度で、とりあえず試してみるには都合がよかった。
 安価な割には非常に立派なケーブルで、見た目もプラグも実にしっかりしている。ただ、結構硬く、取り回しには少々苦労した。
 肝心の音質の変化なのだが、残念なことに、これがさっぱり変わらなかったのである。
 当時のシステムはMAJIK DS-IとAudience122というシンプルなもので、ルーター⇔DS間にRJ45Gをあてがったのだが、音質の変化はまるで聴き取ることができなかった。
 ここで、私は「やっぱりLANケーブルなんかで音は変わらない」という結論に大きく傾くことになる。

 時は流れ、忘れもしない2011年の東京インターナショナルオーディオショウ。
 マランツブースにおいて、audioquestの新製品のデモンストレーションが行われていた。デモの主役はLANケーブルの新製品である。NA7004を使い、ハブにあらかじめ旧製品のRJ45Gも繋いでおいて、新旧の比較をするというものだった。RJ45Gとの比較という意味でも、本当にLANケーブルで音は変わるのかという疑問に答える意味でも、私にとってまたとない機会だった。
 新製品――Ethernet forestに替えて音を出した瞬間、私は認めざるを得なくなった。


 LANケーブルで音は変わる。


 地震やら何やらでばたばたしていた身辺が一段落して、Ethernet forestをシステムに導入したのは、既にスピーカーがSapphireに替わった後のことである。
 Ethernet forestはかつてイベントで体験したものを彷彿とさせる、素晴らしい変化をシステムにもたらした。
 音の背景の雑味が減る――S/Nが改善されることで、今まで埋もれてしまっていた微小な音が聴こえてくるようになる。
 あまりにも陳腐な表現で恐縮だが、端的に言って「ベールが剥がれた」とはまさにこのことだ。
 一聴してわかる大きな改善に、私は小躍りして喜んだ。
 するとまた、いつもの病気が顔を出す。

「エントリークラスのフォレストでこれだけの効果があるなら、もっと上のクラスになるとどうなるんだ?」

 そして気付けば。
1
 うちに蛇が現れた。
2
 でかい。
3

 同じくaudioquestの、Ethernet Vodkaである。さすがにDiamondに手を出す勇気はなかった。
 コレをフォレストと繋ぎかえて、期待に胸をときめかせながら音楽を鳴らした。

 ……鳴らしたのだが、あまり違いが判らなかった。
 この時既に、私は「LANケーブルで音が変わる」ということに対して肯定的だったので、音質変化に対して真っ向から疑ってかかったわけではない。それどころか、変われ変われ、もっと良くなれと身を乗り出して変化を聴き取ろうとしていた。
 それでもなお、残念なことに、あまり違いが判らなかった。
 最大限肯定的に変化を捉えれば、フォレストの時と同様、「背景がより静かになり、細かい音が現れるようになった」ということになるのだが、変化の幅はフォレストに比べて遥かに小さかったのも確かだ。

 このことは、ウォッカがたいしたケーブルではないことを示すのではなく、むしろ、フォレストがオーディオ用LANケーブルとしてずば抜けたCPの高さを有するということを示している。アクセサリーにせよ、機器にせよ、重箱の隅をほじくり返すかのごとき微細な変化に高額な投資を強いられるオーディオ業界において、Ethernet forestがネットワークオーディオにもたらす改善幅は凄まじいものがある。

 audioquest以外のオーディオ用LANケーブルを試したことは一度もないのだが、とにかく私自身の環境でこれだけの変化を体験してしまった以上、この記事の問いかけに対し、私は以下の結論を出さざるを得ない。


 LANケーブルで音は変わる。


 オカルト呼ばわり大いに結構。
 私だって、「そんなバカな」と思ってしまう。
 なぜLANケーブルで音が変わるのか、考えてもまったく理由が分からない。そもそも技術者でもない以上、考えたところで結論など出るわけもなし。ただ、メーカーが喧伝する突拍子もない理論を信じるつもりも毛頭ないが。
 なんにせよ、私の環境で、LANケーブルによって音が変わったことだけは事実だ。理論はさっぱり分からずとも、「〇〇をすれば音が変わる」なんてものはオーディオにはザラにあるし、これはこれでいいのだと思う。現に、LANケーブルで音が良くなって、私は嬉しい。

 ちなみに、ウォッカを買って余ったフォレストはNAS⇔ハブ間の接続に使用している。
 こちらはプレーヤー⇔ハブ間とは異なり、まったく変化を感じない。でも、なんとなく使っている。オーディオなんてそんなもん。


 なお、言うまでもないことだが、ネットワークオーディオではLANケーブルで音が変わる云々を言い出すよりも前に、やらなくてはいけないことが腐るほどある。
 そのことを忘れてはならない。



【音源管理の精髄】 目次 【ネットワークオーディオTips】

スポンサーリンク


関連記事

DTS:Xのソフトを片っ端から聴く

 片っ端っつっても3枚しか持っていないが。 Pioneer SC-LX59でDolby

記事を読む

【レビュー】逢瀬 AK4495S試作DAC 運用・音質編

【レビュー】逢瀬 AK4495S試作DAC 外観編  本機のUSB入力はAmanero C

記事を読む

【BDレビュー】 第246回『エリジウム』

『第9地区』の監督の新作だってんなら……もう見るしかないでしょうよ 画質:13 音質

記事を読む

【ネットワークオーディオTips・実践編】 『コントロール』する

 「ここにさえ来ればネットワークオーディオがまとめてわかる!」を目指し、ひたすら書いてきた【音源管理

記事を読む

LUMIN T1 & D1 来たる

【CES2014】 LUMINに新製品色々 LUMIN S1、T1、D1、さらにL1 C

記事を読む

【BDレビュー】第319回『オデッセイ』

 UHD BDも購入予定。  しかもエクステンデッド版はDolby Atmos収録である。

記事を読む

【ネットワークオーディオTips】コントロールアプリの紹介 『mconnect player HD』

 いつまで経ってもアプリの検証が進まず、気が付いたら2015年になってしまった。  このままでは永

記事を読む

言の葉の穴 2014-2015

 あけましておめでとうございます。  昨年は当ブログにお越しいただきましてありがとうございました。

記事を読む

ネットワークオーディオの未来

 狭義のネットワークオーディオとは、「NASに音源を置き、LAN経由でプレーヤーにストリーミングし、

記事を読む

【ネットワークオーディオTips】コントロールアプリの紹介 『SongBook HD』

 いつまで経ってもアプリの検証が進まず、気付けば2015年になってしまった。  このままでは永遠に

記事を読む

スポンサーリンク

Comment

  1. いしい より:

    私もお手頃な値段だったのでオーディオクエストのイーサネット・フォレストをヨドバシで買ってAir mac expressとPioneerのN-50A間で使ってます。

    今度、fidataを導入する時には滲みなどが少なくイーサネットフォレストより更に音が良いと言われるティグロンのMGL-L1を使ってみようかと考えてます。

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

スポンサーリンク

【レビュー】SOULNOTE D-1 音質編

外観・運用編 ・再生環境(詳細) canarino

【Munich HIGH END 2017】Roon Labs自身による“Nucleus” Roon Server

 Munich HIGH END 2017で気になった製品やら何やら。

【Munich HIGH END 2017】Playback Designs Dream DAC MPD-8 / Transport MPT-8 【Roon?】

 Munich HIGH END 2017で気になった製品やら何やら。

【Munich HIGH END 2017】DELAの進化は続く

 Munich HIGH END 2017で気になった製品やら何やら。

【Munich HIGH END 2017】Mark Levinson No519 【Roon Ready】

 Munich HIGH END 2017で気になった製品やら何やら。

【Munich HIGH END 2017】dCS Vivaldi One 【Roon Ready】

 Munich HIGH END 2017で気になった製品やら何やら。

【Munich HIGH END 2017】Ayre QX-8 / AX-8 【Roon Ready】

 Munich HIGH END 2017で気になった製品やら何やら。

【Munich HIGH END 2017】MSB Technology The Reference DAC 【Roon Ready】

 Munich HIGH END 2017で気になった製品やら何やら。

【Munich HIGH END 2017】AURALiC G Series 【Roon Ready】

 Munich HIGH END 2017で気になった製品やら何やら。

言の葉の穴・四周年

 三周年記事で地元ネタ全面解禁宣言をしてから1年。  主に私のや

【Munich HIGH END 2017】Dynaudio Special Forty

Dynaudio Special Forty https://y

【レビュー】SOULNOTE D-1 外観・運用編

 SOULNOTEのDACには、対応フォーマットのスペックを偏重する流

LUMIN U1がDSD256に対応

LUMINのネットワークトランスポート「U1」、11.2MHz DSD

【菅江真澄紀行文】『菅江真澄と歩く 二百年後の勝地臨毫 出羽国雄勝郡』が完成しました

小町ゆかりの地「真澄と歩く」出版プロジェクト - FAN AKITA

【御礼】ヘッドホン祭&北陸オーディオショウ(デジ研)・OTOTEN 2017が終了しました

春のヘッドホン祭2017 / 第2回北陸オーディオショウの「デジ研」に

【おしらせ】OTOTEN 2017に参加します

 久々だと思っていたら三週続けてのイベント参加です。 O

【おしらせ】春のヘッドホン祭2017 / 第2回北陸オーディオショウの「デジ研」に参加します

 久々のイベント参加になります。 春のヘッドホン祭201

【レビュー】Nmode X-DP10 音質編

外観編 設定(主にJPLAY)・運用編 ・再生環境

Roon 1.3 (Build 216)、PCM 768kHz・DSD512

Roon 1.3 (Build 216) Is Live! - Roo

【レビュー】Nmode X-DP10 設定(主にJPLAY)・運用編

Nmode X-DP10 外観編  ドライバをインストールし

→もっと見る

PAGE TOP ↑