*

【音源管理の精髄】 ネットワークオーディオにおけるDSD 【ネットワークオーディオTips】

公開日: : 最終更新日:2014/11/24 PC・ネットワークオーディオ関連, オーディオ・ビジュアル全般

 別にDSDに限った話ではないが、「より高いスペックのハイレゾ音源への対応」という点において、ハード的にもソフト的にも、“いわゆる”ネットワークオーディオは常にPCオーディオの後塵を拝してきた。LINN DSは例外として。
 例えば私がネットワークオーディオの日本国内における第二のスタートと勝手に位置付けているNA7004とNP-S2000は、発売当初“192kHz/24bit非対応”という快挙を成し遂げたわけだが、その時点でPCの再生ソフトは既にDSD再生への道を開きかけていたように記憶している。DSDを再生できるソフトとして、KORGのAudioGateなどが有名だった。

 その後、USB DACは雨後の筍の如き猛烈な勢いで質・量ともに隆盛していく。老舗メーカーが凄まじく力の入った渾身のUSB DACを発表したと思えば、見たことも聞いたこともない新興メーカーが(音源への対応という意味で)とんでもないスペックのUSB DACを出してくる。負けじと大メーカーもそれに追従する。
 DSDへの対応も瞬く間に進んだ。DoP、ASIO、DSDのネイティブ再生云々……次々と耳慣れない言葉が現れてはメディアを賑わせ、再生ソフトとの組み合わせも含め、PCオーディオにおけるDSD再生は大いに盛り上がった。
 384kHz/32bitとDSD128の対応をもってここ最近は落ち着いた感があるが、ここ4年程のUSB DAC市場の盛り上がりは凄まじいものがあった。正直言って見ていて楽しかった。いったいいつになったらスペック競争が落ち着くんだ? そう思った人も多いことだろう。最近ではごく安価な製品や、ポータブルDACすらDSDにフル対応し、据え置き機では「DSD対応にあらずんばUSB DACにあらず」のような状況を呈している。

 その一方で、日本におけるネットワークオーディオプレーヤーは停滞した。
 例えば2011年に発売されたN50は今さら192kHz/24bitに対応したことを自慢するという快挙を成し遂げたが、それからというものネットワークオーディオプレーヤーはまるで鳴かず飛ばず。海外勢も申し訳程度に姿を現しては、ほとんど存在感を示すことなく消えていった。
 ゴミのような出来の純正コントロールアプリは一向に改善されないまま放置され、ギャップレス再生すら最近まで出来ず、「On Device Playlist」は今に到るまで実現されていない。すなわち、ネットワークオーディオプレーヤーは、ハードウェアのスペック的には最初からUSB DACに追いついておらず、さらに頼みの綱の「快適な音楽再生」すら絵に描いた餅に過ぎなかった。スペック的にも快適さ的にも、PCの再生ソフト+USB DACとは勝負になっていなかったのである。
 そんななか、ネットワークオーディオは「AVアンプのオマケ」という安住の地を見つけたように見えた。毎年新製品を出すわけにはいかないピュアオーディオ製品とは違い、AVアンプは毎年必ずモデルチェンジをする。最近ではそれが出来なくなったメーカーも出てきたが。ならば、その時々の最新のネットワークオーディオ機能を搭載しよう、というわけである。もっとも、そんなことをしたせいで、“買った年・モデルによってまったく機能が異なる”という致命的な分断が同一メーカー内においてさえ生じることになってしまった。これは、「DS」というプラットフォームを構築し、ソフトウェアアップデートによりすべてのモデルで共通のユーザビリティを提供するLINNとの決定的な違いでもある。
 分断という代償を支払った結果、USB DACと比べれば遅々とした歩みだったが、AVアンプにおけるネットワークオーディオ機能は進歩を続けることになった。
 ネットワーク経由でのDSD再生を最初に果たしたのもAVアンプである。というより、国産機ではスフォルツァートを除き、今なおAVアンプ以外でネットワーク経由のDSD再生ができるネットワークオーディオプレーヤーは存在していない。はたしてAVアンプでわざわざDSDを再生するユーザーがどこまでいるのか、またAVアンプでDSDを再生したところでどこまで音質的に期待できるのかという問題もある。
 また、ネットワークオーディオはDSD再生を果たすうえで、「サーバー」という問題をクリアする必要があった。DoPやらASIOやらで早期に再生への道筋が出来上がったPCオーディオ――USB DACとは異なり、ネットワークオーディオのサーバーでDSDの配信に対応したものはそれほど多くはない。もっとも、そもそも再生できるネットワークオーディオプレーヤーが最近まで存在していなかったのだから仕方がないともいえるが。

 国産機においてはAVアンプを買うくらいでしかネットワーク経由でDSDを聴く方法がないわけだが、もっともっと高い価格帯に視線を移せば、他にもいくつか選択肢はある。なお、残念ながら? LINN DSは対応する気はまったくないようだ。
 まずは国産機の希望にして麒麟児、スフォルツァートのDSP-03。DST-01はどうなっているのかよくわからない。
 海外勢だと、おなじみLUMIN A1。CHORD DSX1000(もっともDSDではギャップレス未対応とのことで論外)。さらに高い価格帯ではCH PRECISION C1のオプションボードなどなど。あとは未確認ながら、日本に入ってきていない製品でもネットワーク経由でのDSD再生に対応したものがあるようだ。しかし、どれも高い。べらぼうに高い。5桁前半の投資でフルスペックのDSD対応機が買えるUSB DACとは大違いである。しかも「DSD対応NAS」とやらがまたべらぼうな値付けで売り出される始末。

 というわけで、ネットワークオーディオにおけるDSDが置かれている状況は厳しい。
 AVアンプのオマケとして導入するのではなく、本格的に音質を追求しようと思えば、覚悟の要る投資を強いられる。
 しかし、今は安価でまともなネットワークオーディオプレーヤーがないという問題も、いずれは時間が解決してくれるだろう。その時まで、ユーザーがネットワークオーディオという領域に愛想を尽かさないことを祈るばかりだ。
 そして、常々言っているとおり、PCオーディオだろうがネットワークオーディオだろうが、音源そのものは同じ。よって、DSD音源の管理運用を突き詰めることは、決して無駄にならないのである。



【音源管理の精髄】 目次

スポンサーリンク


関連記事

no image

【BDレビュー】 第166回『美女と野獣』

画質:15 音質:10 映像はAVC、音声はDTS-HDMAの24bit、7.1ch

記事を読む

【祝】ついにディズニーからUHD BDがリリース――第一弾は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』

James Gunn Confirms Guardians of the Galaxy Vol. 2

記事を読む

“ハイレゾ対応機器”の定義が発表されたので

 自前の機材がどれだけ“ハイレゾ対応”なのかちょっと調べてみた。 日本オーディオ協会、“ハ

記事を読む

【レビュー・更新】OPPO Sonica DAC ネットワーク編

導入・外観編 音質編  USB入力と比べて対応フォーマットが寂しいのは残念だが、

記事を読む

【BDレビュー】第251回『蟲師 特別篇 日蝕む翳』

画質:8 音質:8 映像:AVC 音声:リニアPCM ステレオ 24bit

記事を読む

【オブジェクトベースシアターへの道】DTS:X正式発表

DTS:Xはどうなる? 2、3年前から劇場公開で使われまくっているDolby Atmosでさえ

記事を読む

【音源管理の精髄】 WAVでリッピングするとタグはどうなる? 【ネットワークオーディオTips】

 正直「何を今更」というか、物凄く不毛なことをしている気がするのだが、未だに「WAVではタグが使えな

記事を読む

【レビュー】逢瀬 AK4495S試作DAC 運用・音質編

【レビュー】逢瀬 AK4495S試作DAC 外観編  本機のUSB入力はAmanero C

記事を読む

no image

【BDレビュー】 第124回『トランスフォーマー』

マイケル・ベイ大勝利! 画質:14 音質:10 映像はAVCでビットレートは25

記事を読む

no image

【BDレビュー】 第116回『WALL.E』

画質:15☆ 音質:15 映像はAVC、ビットレートは高めで安定。 音声はDTS-HDM

記事を読む

スポンサーリンク

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

スポンサーリンク

月刊HiVi 2017年9月号から連載が始まりました

月刊HiVi 9月号 8/17発売 特集「有機ELテレビ読本2

【UHD BDレビュー】第15回『レヴェナント: 蘇えりし者』 米国盤

【4K/HDR環境の導入に伴い、2016/11/30初出の記事を更新・

【UHD BDレビュー】第14回『Sicario / ボーダーライン』 米国盤 【Dolby Atmos】

【4K/HDR環境の導入に伴い、2016/11/21初出の記事を更新・

【UHD BDレビュー】第13回『ローン・サバイバー』 米国盤 【DTS:X】

【4K/HDR環境の導入に伴い、2016/11/20初出の記事を更新・

【地元探訪・神様セカンドライフ編】元稲田神社/あぐりこ稲荷(羽後町杉宮)

神様セカンドライフ 66話「あぐりこ稲荷」  雄勝郡の稲荷オ

【UHD BDレビュー】第12回『チャッピー』 【Dolby Atmos】

【4K/HDR環境の導入に伴い、2016/11/20初出の記事を更新・

【UHD BDレビュー】第11回『エクソダス:神と王』 米国盤

【4K/HDR環境の導入に伴い、2016/11/17初出の記事を更新・

【UHD BDレビュー】第10回『マン・オブ・スティール』 米国盤 【Dolby Atmos】

【4K/HDR環境の導入に伴い、2016/11/16初出の記事を更新・

【UHD BDレビュー】第9回『インデペンデンス・デイ: リサージェンス』 米国盤 【Dolby Atmos】

【4K/HDR環境の導入に伴い、2016/11/06初出の記事を更新・

【UHD BDレビュー】第8回『インデペンデンス・デイ』 【DTS:X】

【4K/HDR環境の導入に伴い、2016/11/06初出の記事を更新・

【UHD BDレビュー】第7回『アメイジング・スパイダーマン2』 【Dolby Atmos】

【4K/HDR環境の導入に伴い、2016/11/05初出の記事を更新・

【UHD BDレビュー】第6回『クリード チャンプを継ぐ男』

【4K/HDR環境の導入に伴い、2016/11/05初出の記事を更新・

【UHD BDレビュー】第5回『X-MEN: アポカリプス』 米国盤 【Dolby Atmos】

【4K/HDR環境の導入に伴い、2016/11/04初出の記事を更新・

【ハイレゾ音源備忘録】結城アイラ / decade wind(NetAudio27付録) 【768kHz/32bit】

・アーティスト / アルバムタイトル / 曲タイトル 結

【UHD BDレビュー】第4回『パシフィック・リム』 【Dolby Atmos】

【4K/HDR環境の導入に伴い、2016/10/07初出の記事を更新・

SOtM sMS-200でMinimServerとBubbleUPnP Serverが使えるようになった

【レビュー】SOtM sMS-200 外観・仕様編 【レビュー】SO

【UHD BDレビュー】第3回『キング・オブ・エジプト / GODS OF EGYPT』 米国盤 【DTS:X】

【4K/HDR環境の導入に伴い、2016/07/31初出の記事を更新・

【UHD BDレビュー】第2回『デッドプール』 米国盤 【Dolby Atmos】

【4K/HDR環境の導入に伴い、2016/07/31初出の記事を更新・

【UHD BDレビュー】第1回『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』 米国盤 【Dolby Atmos】

【4K/HDR環境の導入に伴い、2016/07/28初出の記事を更新・

LUMINのプレーヤーがついにMQAに対応

LUMIN is NOW Roon Ready! そしてMQAとSpo

→もっと見る

PAGE TOP ↑