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HDR考/続・「4Kマスターではない」等のUHD BDをどう捉えるべきか

公開日: : 最終更新日:2017/07/07 BD・ホームシアター関連, オーディオ・ビジュアル全般

「4Kマスターではない」等のUHD BDをどう捉えるべきか
そのUHD BDは本当に4Kマスターなのか?


 先日LG OLED55B6Pを導入し、4K/HDR環境でUHD BDを評価する下地が整った。
 今後の【UHD BDレビュー】のために、画質評価の考え方についてまとめておきたい。



 記事タイトルの後者の結論から先に言うと、


 「作品の映像が4Kマスターか否か」がUHD BDの画質に与える影響は、当初考えていたほど大きくなかった。それどころか、画質面において――時として解像感や情報量など、直接的に解像度の恩恵を受ける要素でさえ――2Kマスターの作品が4Kマスターの作品を上回ることだってある。
 もちろん、「4Kマスターか否か」で画質への影響がないわけではない。私が今まで見てきたUHD BDでも、画質の平均値では4Kマスターのタイトルが2Kマスターを上回っていることも確かだ。

 ただ、映像体験におけるBDとUHD BDの決定的な差は、解像度の違い(2K対4K)よりも、UHD BDのマスターの差よりも、むしろHDRに拠るところが大きい


 「あくまでも現時点の話」ではあるが、LG OLED55B6Pで手持ちのUHD BDを一通り見た結果、上記の結論を得た。

 よって、4KマスターではないUHD BDをどう捉えるべきかについては、「情報としては把握しつつも、残念とは思いつつも、あまり気にしない」ということになろうか。
 「4Kマスターの低品質なUHD BD」よりも、「2Kマスターの高品質なUHD BD」の方が、ユーザーにとって遥かに価値があるのだから。



 続いて、HDRについて考える。



 もう10年以上も前になるのか。
 初めてBDの映像を見た時、SDとHDという解像度の差がもたらす解像感と情報量における歴然たる違いに、DVDの映像が「偽物」なのに対してBDの映像は「本物」なのだという印象を抱いた。オリジナルの映像の時点で、BDという器を満たすだけの仕様が求められるとはいえ、この印象は今も変わってはいない。

 当然UHD BDにも、かつてBDで味わったような、従来のメディアとは次元の違う解像感や情報量を求めていた。

 しかし、パッと見の解像感や情報量に関して言えば、4Kディスプレイで見た場合であっても、期待していたほどの向上は感じられなかった。もっとも、この辺はディスプレイのサイズや視聴距離も密接に関わってくるのだろうが。
 『レヴェナント:蘇りし者』のように、こりゃすげえと思うタイトルも確かにある。間違いなく良くはなっているのである。それでもなお、感覚的な向上幅はDVDからBDの時に比べれば遥かに小さい。それこそ、CDの時点で優秀録音だった音源のハイレゾ版を聴いた時のような感覚とでも言えばいいのか……
 BD(そしてその背後にある撮影&映像制作機材)の画質が登場当初からは信じられないほどの進化を続けた結果、既に並大抵の画面サイズでは、UHD BDと比べても解像感や情報量の差が見え辛いレベルに到達したと言えるのかもしれない。


 それではUHD BDはBDと画質的にたいして変わらないのかというと、そうでもない。解像度以外にも、UHD BDを特徴付ける要素はある。
 ここで出てくるのがHDRである。

 UHD BDが出た今となっても、BDに対する「本物」という印象は変わってはいない。
 一方で、4K/HDR環境下で見たことで得たUHD BDに対する印象は、ずばり「自然」ということに集約される。ここでいう「自然」とは、「肉眼で見る世界に近い」という意味。
 そしてHDRこそが、UHD BDの「自然」な映像の肝になっている。
 もはや解像感や情報量はBDにおいても完全に一線を越えた感があり、そのうえでなお文字通りUHD BDとBDの明暗をわけるものは、HDRの存在であるように思う。


 はじめてHDRという言葉に触れた時、正直なところ「なんだよ眩しいだけかよ」との想いを抱いた。今さらながら、理解の浅さを恥じねばなるまい。

 HDR――High Dynamic Rangeという言葉の本来の意味を冷静に考えれば、「眩しいだけ」なんてことはあるはずもなかった。
 ダイナミックレンジは「上にも下にも」広いのである。
 「白飛びを抑える」や「黒潰れを抑える」ばかりが能なのではない。
 「暗いシーンがきちんと暗い」こともまた、HDRの偉大な効能である。
 「かつてない鮮烈さに加えて高輝度まで色彩を失わない輝き」と「強い光の傍らでなお暗く在り続ける闇」。実際の風景を撮影した映像は言うまでもなく、CGが乱舞する映像でさえ、これらが一画面の中に共存することで、「自然」という印象が生じる。
 解像度とはまた異なる次元で、映像が「別物」に見える。パッと見では……と先述したが、解像感はさておき、光と闇の深化による情報量の増大は確かにある。

 理屈ではわかっていたつもりでも、やはり実際に見て得た実感には遠く及ばない。

 ちなみにUHD BD/HDRの特徴のひとつとして、「空」の表情の豊かさが挙げられる。全体的に輝度が上がりつつ、空の青は薄まるどころか深みを増し、雲も白飛びを起こすことなく強い立体感を得る。
 HDRではハイライトのさらなる煌めきによる現実感の強化はもちろんのこと、闇の深さや空の描写にも注目したい。


 BD――SDR時代は、ソフトにせよディスプレイにせよ、コントラスト感を維持したまま暗部階調を持ち上げた「よく見える画」・「暗部まで見通しの良い画」が支配的だったと感じる。現に私も、【BDレビュー】ではそういう画を「暗部が潰れず情報量に富む」として高く評価してきた。
 今になって思えば、そのような画は「画作り」としてはきっと正しいのだろうが、「自然」かと言われれば、必ずしもそうではなかった。
 一方で、HDRではダイナミックレンジの制約に伴う黒潰れや、映像中の高輝度領域に引っ張られた暗部の持ち上がりを排除できるため、SDRと比べて全体的にむしろ暗い。そしてHDRの「暗いところはしっかり暗い」・「暗いのだから見えないものは見えない」という方が、結果的に自然に感じる。

 ただ、「HDR対応ではあるけれども派手に黒浮きを起こす」ディスプレイで、「HDRならではの暗い画」を見た時、「黒が沈まないせいで暗部の情報量がばっさり抜け落ちた、ただ薄暗いだけの悲惨な画」になりはしないだろうか、という懸念も抱く。
 HDRの真価を発揮するためには、ディスプレイに求められる表示性能は相当厳しいものになるはずだ。まったく、有機ELは最高だぜ。


 UHD BD――4K/HDR時代の画質評価は、従来のSDRに対するものとは少々異なる視点で臨まねばなるまい。
 その際、HDRが醸成する「自然」という感覚は、決して無視できない要素となろう。



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