*

「純粋なネットワークオーディオ」への憧憬

 「ネットワークオーディオとは音楽再生におけるコントロールの方法論である」と言っているのも、「ネットワークオーディオの本質はコントロールである」と言っているのも、「ネットワークオーディオの実践に必ずしも単体プレーヤーは必要ではない」と言っているのも、「PCを使わないことがネットワークオーディオなのではない」と言っているのも、他ならぬ私自身である。

 『サーバー』・『プレーヤー』・『コントロール』の三要素から成り、さらにネットワークを用いて再生機器からコントロールを独立させているのがネットワークオーディオのシステムであり、スタイルである。
 単体ネットワークオーディオプレーヤーやNASの使用はネットワークオーディオの実践をそれ自体では意味せず、ネットワークオーディオをネットワークオーディオたらしめるものはあくまでもコントロールである。

 「コントロール」という要素からネットワークオーディオという認識の領域を押し広げた結果、再生ソフトとUSB DACを用いるいわゆるPCオーディオのシステムも、サーバーとプレーヤーの機能を併せ持つミュージックサーバーを用いるシステムも、等しくネットワークオーディオの文脈で捉え、扱い、理解し、楽しめるようになった。

 これらの認識は揺るぎない。


 しかし。

 しかしだ。


 それでもなお、「単体サーバーと単体ネットワークオーディオプレーヤーを個別に用意するシステム」への思い入れが完全に消えたわけではない。

 これはつまるところ、以下の二つのシステムのことである。
 「サーバー」にNASを用いるか、オーディオ用に作られた単体サーバーを用いるか、サーバーソフトを入れたPCを用いるかは今となっては同じものと扱っていいだろう。

【ネットワークオーディオTips】全体の流れ――音源の管理運用・システムの構築・実際の音楽再生

ネットワークオーディオ虎の巻07

ネットワークオーディオ虎の巻20161014更新06

 なんでこのシステムに心惹かれるのかは、結局のところ、私が出会った初めてのネットワークオーディオの姿であり、すべての思考の原点だからなのだろう。
 初めてLINN DSを体験した時の衝撃はあまりにも大きかった。

 だからこそ、USB DACとネットワークオーディオプレーヤーをどちらか選べと言われれば、後者を選びたいという想いが勝る。市場動向という名の現実に負けてUSB DACを選ぶことになるとしても、その想いは残る。
 もはや使う機器に関わらず「同じことができる」ことはわかりきっているのに、DELAやfidataを純粋にサーバーとして使って、LINN KLIMAX DSやSFORZATO DSP-01をプレーヤーに使いたいと思ってしまうのである。USB出力搭載のネットワークオーディオトランスポートは……アリだな。

 ちなみにUSBとLANではどちらが高音質とか、やっぱりPCでは駄目だとか、そういう話をしたいのではない。
 もっともっともっともっと単純で原始的な、それこそ理由もへったくれもなく都会より田舎の方が好きだとか、そういう次元の話である。


 時に私は自身を指して「ネットワークオーディオ原理主義者」なんて呼ぶ。
 その時は「ネットワークオーディオのコントロールは手元の端末でやるもんだからプレーヤーにディスプレイなんて要らん!」とか、「音源管理は結局PCでやった方がずっと便利なんだからオーディオ機器の側にそんな機能は要らん!」とか、そんなことを言いたい時である。

 が、それとは別に、コントロールだけでなく機器間の音声データのやり取りまで文字通り「ネットワーク」の枠内で完結する、いわば「純粋なネットワークオーディオ」への憧憬が、今も私の中に焼き付いて消えない。
 はたしてこのようなシステムを「純粋」と表現するのが妥当かどうかはわからないが、逆にこれ以外の言葉も思いつかない。


 とはいえ、私がネットワークオーディオを通じてユーザーに体験してもらいたいもの、それはひとえに「居ながらにしてすべてを見、すべてを操ることで得られる、音楽再生における筆舌に尽くしがたい快適さ」である。
 ネットワークオーディオとは特定の再生機器に限定されるものではない。私の個人的なシステム嗜好などどうでもいいのだ。

 オーディオ機器ベース・PCベース問わずミュージックサーバーが興隆し、再生ソフトはますます進化し、Roonだって登場した。
 ネットワークオーディオを実践する環境はソフトとハードの両面でかつてないほど整い、一年前と比べてもますますいい時代になった。

 体験して、味わってもらうことを願ってやまない。



Roon関連記事まとめ

【音源管理の精髄】 目次 【ネットワークオーディオTips】

よくある質問と検索ワードへの回答

スポンサーリンク


関連記事

コンテンツに貴賎なし

 画質が良かろうが悪かろうが、音質が良かろうが悪かろうが、どんな機材や環境で再生・鑑賞しようが、作品

記事を読む

【レビュー】OPPO Sonica DAC 音質編

導入・外観編 ネットワーク編 ・再生環境(詳細) canarino Fil

記事を読む

【ハイレゾ音源備忘録】fox capture plan / UNTITLED

・アーティスト / アルバムタイトル fox capture plan / UNTIT

記事を読む

画質を取るか、迫力を取るか

ホームシアターにおけるプロジェクターの行く末  以前は市場動向や将来性という点から「テレビかプ

記事を読む

【ネットワークオーディオTips】foobar2000のコントロールアプリ 『foobarCon』

 音楽を聴く際にいちいちPCと向き合いたくない。  マウスをカチカチもしたくない。  要は、オー

記事を読む

no image

【BDレビュー】 第158回『プライベート・ライアン』

サラウンドを組んだ時、鴉の次に見たのがこの映画だった。 映画音響の魅力に取り付かれた本当の始まりか

記事を読む

【ハイレゾ音源備忘録】HDtracks 2014 Sampler

・アーティスト / アルバムタイトル 各曲それぞれ / HDtracks 2014 S

記事を読む

canarino Fils × EL SOUND アナログ電源 DC12V5A Improved

ついにデジタル・ファイル再生の原器を手に入れたぞ  canarino Filsはまだ何度か

記事を読む

【音源管理の精髄】 いざ、リッピング――機械任せにしてはいけない! 【ネットワークオーディオTips】

 PC/ネットワークオーディオが隆盛を極めたところで、CDの価値が消えてなくなるわけではない。  

記事を読む

【BDレビュー】 第247回『オブリビオン』

 想像以上に面白かった映画。そして何より…… 画質:14 音質:11 映像:A

記事を読む

スポンサーリンク

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

スポンサーリンク

【祝】『グラディエーター』がUHD BD化

アカデミー5部門受賞「グラディエーター」5月9日4K Ultra HD

【祝】『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』がUHD BD化

Star Wars: Episode VIII - The Last

【レビュー】Black Ravioli BR.Pad / BR.Base 設置編→音質編

【2018/02/06初出の設置編に音質編を追加】  B

【地元探訪・神様セカンドライフ編】院内の怪猿・貞宗

 ここんとこ猿無双が続いているので。 77話「怪猿が征く」 7

HiVi 2018年3月号で記事を執筆しました【おまけつき】

 本日発売。 月刊HiVi 3月号 2/17発売 HiVi3

【BDレビュー】第356回『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』

https://www.youtube.com/watch

【BDレビュー】第355回『龍の歯医者』

 むしろコレが欲しかった。  特別版は高かった……

BenQの20万円を切る4K/HDRプロジェクター「HT2550」

20万円を切る4K/HDRプロジェクタ。ベンキュー「HT2550」は「

【UHD BDレビュー】第54回『ターミネーター2』 米国盤

【BDレビュー】第106回『ターミネーター2』

【UHD BDレビュー】第53回『ダンケルク』

画質:10 音質:限りなく15と同質な10 (評価の詳

【UHD BDレビュー】第52回『インターステラー』

【BDレビュー】第303回『インターステラー』

【UHD BDレビュー】第51回『インセプション』

【BDレビュー】第185回『インセプション』 画

【UHD BDレビュー】第50回『ダークナイト ライジング』

 祝・【UHD BDレビュー】もついに50回。

【UHD BDレビュー】第49回『ダークナイト』

【BDレビュー】第102回『ダークナイト』 【AV史

【UHD BDレビュー】第48回『バットマン ビギンズ』

【BDレビュー】第173回『バットマン ビギンズ』

JPLAYStreamerでfidata Music Appが使えるようになった

 fidata Music AppがバージョンアップしてJPLAYSt

ESOTERIC N-03T

エソテリック、初のネットワークオーディオトランスポート「N-03T」。

【ハイレゾ音源備忘録】すぎやまこういち・東京都交響楽団 / 交響組曲「ドラゴンクエストXI」過ぎ去りし時を求めて

なぜハイレゾ音源を買うのか ・アーティスト /

アイ・オー・データ Soundgenic ― ネットワークオーディオの呼び水となるか

アイ・オー、エントリー向けオーディオNAS「Soundgenic」。1

【レビュー】SOULNOTE A-2 続・音質編 ― 純正ボード「SSB-1」と純正ケーブル「SBC-1」

【レビュー】SOULNOTE A-2 導入・外観・運用編 【レビ

→もっと見る

PAGE TOP ↑